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環境への取り組み

色を用いた潤滑油劣化診断技術

信越・北陸地区

2024年12月20日
信越・北陸地区

福井大学 工学部
助教 今 智彦

はじめに

 地球温暖化問題を背景にカーボンニュートラルの推進が世界的に進められており、温室効果ガスの削減が産業界に求められています。私の専攻するトライボロジーという分野は、摩擦・摩耗・潤滑の科学を扱う学問領域であり、「摩擦損失低減」や「潤滑油の長寿命化や効率利用」などから温室効果ガスの削減に取り組んでいます。日本の温室効果ガス排出・吸収目録を見てみると、2022年度の廃棄物分野の温室効果ガス排出量はCO2換算で約3668万tonであり、その内廃油由来のCO2排出は約810万tonと全体の約22%を占めることが報告されています(1)。また、潤滑油は「機械の血液」とも呼ばれ、機械の健康状態と密接に関係しています。そのため、潤滑油の効率利用は機械の安心・安全運転にも貢献し、かつ廃油削減による温室効果ガスの削減にも大きく貢献することがわかります。

潤滑油の劣化を診断する

 一般的に潤滑油は、エンジンオイルのように過去の実績から一定の走行距離や使用年数などで定期的に交換する場合が多くあります。しかし、このような方法では使用環境の違いによって寿命を残した状態で交換する可能性があり、寿命に至ってない潤滑油を捨てることになり、廃油量が増えてしまいます。そのため、潤滑油を効率的に利用するには、潤滑油診断技術によって潤滑油の劣化状態を把握し、潤滑油を最大限使用した後に交換する必要があります。一般的に潤滑油の劣化診断は定期的に潤滑油をサンプリングし、全酸価、赤外分光分析、金属元素分析、分析フェログラフィなどの分析室型の潤滑油分析を行うとされています。しかし、このような分析室型の潤滑油分析を非常に高価であり、また分析結果が出るまで時間がかかることから機械の稼働スケジュールを立てることが難しいといった欠点もあります。そのため、日常的に簡便に潤滑油の劣化を診断できる手法があれば、簡便な診断で異常が生じた際に分析室型の潤滑油分析を行えば良く、コストを節約し効率的に潤滑油を診断することができることから、そのような診断法が求められています。

簡便な方法で潤滑油の劣化を診断する

 私たちの研究室(トライボロジー研究室)では、潤滑油の劣化を迅速かつ簡便に診断する手法として「色」を用いた劣化診断法を研究しています。図1のようなろ過装置を用いて潤滑油をフィルタでろ過すると、潤滑油の劣化状態に応じて着色が生じます。この着色について、RGB値を測定しその色の傾向から潤滑油の劣化状態を診断します。一例として、潤滑油の基油を劣化させた場合の食用油の劣化診断などに用いられる過酸化物価と色との関係について調べた結果を図2に示します。劣化の進行とともにフィルタに着色した色が茶色に変色していることがわかり、それに伴い過酸化物価の値も増加する傾向にあります。このように高価な化学分析結果を色という簡便な方法で翻訳することで、安価に潤滑油の劣化診断が可能となります。最近ではスマートフォンを用いて潤滑油自体の色を撮影することで潤滑油の劣化状態を診断する手法も開発されています(2)。将来的には、色センサ等によって潤滑油の劣化状態をリアルタイムで診断する状態監視技術の開発が期待されます。

図1 色を用いた劣化診断の概略図1 色を用いた劣化診断の概略
図2 潤滑油の過酸化物価と色の関係図2 潤滑油の過酸化物価と色の関係

(1) (国研)国立環境研究所、 環境省監修:日本温室効果ガスインベントリ報告書2024, (2024)
(2) https://premium.ipros.jp/idemitsukosan/product/detail/2001160399/, 2024年11月25日現在

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