
2026年3月13日
東北地区
福島大学 共生システム理工学類
准教授 岩村 振一郎
地球環境を保全し持続可能な社会を実現するためには、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを最大限に活用することが重要です。しかし、これらのエネルギーは天候や時間帯によって発電量が変動するため、安定供給のためには電池やキャパシタなどの蓄電デバイスが重要となります。これらの性能は電極材料によって大きく左右されます。高い電気化学活性を示し、電極の高性能化に有用である金属や金属酸化物が報告されていますが、単独では導電性や反応表面積に課題があります。そのため、高い導電性と大きな比表面積を有する多孔質炭素とナノレベルで複合化すること有効です。
一般に、炭素と金属/金属酸化物をナノレベルで複合化するためには、複雑で高コストなプロセスが必要とされます。そこで私たちは、減圧液パルス(VLP-)CVD法という新しい気相複合化プロセスを開発しました。本手法は、多孔質材料を設置した高温の反応管内に、液体状の原料を液パルスとして断続的に導入する方法です。導入された液体は瞬時にガス化し、発生した高濃度の原料ガスが一気に細孔内部へと広がります。その結果、通常の気相プロセスよりも効率的かつ均一に熱分解物質を析出させることができ、スケールアップにも適しています。また、液体原料を直接利用できるため、従来の気相法では扱いが難しかった有機金属化合物も活用できる点も大きな特長です。
本手法の有効性を検証するため、細孔径150nmの多孔質炭素材料を担体とし、チタンアルコキシドを原料としたVLP-CVD法によりTiO₂とのナノ複合体を作製しました。比較のため、原料ガスを連続的に流通させる一般的なCVD法を、大気圧下および減圧下でそれぞれ実施しました。透過型電子顕微鏡(TEM)観察の結果、連続流通式CVD法ではTiO₂粒子は多孔質炭素表面に不均一に析出し、数十nm程度まで成長していました。これに対し、VLP-CVD法で得られた複合体では、約4nmという非常に微細なTiO₂ナノ粒子が細孔内に均一に分散していることが観察されました。これは、瞬時に高濃度ガスを供給できる本手法の効果によるものです。さらに電気化学測定の結果、VLP-CVD法で作製した複合体は優れた高速充放電特性を示し、長期サイクル試験においても容量劣化がほとんど見られませんでした。これらの特性から、本材料はリチウムイオンキャパシタの正極材料として極めて有望であり、再生可能エネルギーの有効利用を支える蓄電技術への応用が期待されます。
本研究により、多孔質材料と金属/金属酸化物をナノレベルで効率的に複合化する新規気相プロセスを確立しました。本手法はさまざまな金属種へ展開可能であり、多様なナノ複合材料の創製に応用できます。さらにスケールアップが容易で産業化への障壁が低いことから、蓄電デバイスをはじめとする幅広い分野での社会実装が期待されます。
Shinichiroh Iwamura, Shota Motohashi, Shin R. Mukai, “Development of an efficient CVD technique to prepare TiO₂/porous–carbon nanocomposites for high rate lithium-ion capacitors”, RSC Advances, 10(63), 38196-38204, 2020
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