
2026年2月20日
東北地区
秋田大学 国際資源学研究科・国際資源学部
小川 泰正 准教授
秋田県玉川温泉を代表する源泉である‟大噴(図1A)”は、酸性度(質)は日本一、湧出量(量)も国内屈指を誇ります。それ故、質、量ともに日本トップクラスの酸性泉が流入する渋黒川、玉川流域の農業への負の影響も大きく、かつては‟玉川毒水”と呼ばれていました。玉川の河川水の農業利用を目的として、酸性河川水の希釈を目的に、田沢湖に人工的に導入されました。その結果、田沢湖の酸性化が進み、田沢湖固有種であるクニマスを含め、同湖のすべての魚類が絶滅しました。現在は、玉川酸性泉の中和処理により、玉川および田沢湖の水質は改善されましたが、田沢湖の湖水は依然として酸性であり、酸性に強い一部の魚類しか生息できません。この問題は、今現在も続いています。
かつて、わが国では足尾鉱毒事件など、鉱山開発に伴う深刻な環境汚染問題が発生していました。一方で、資源開発に伴う河川水の水質汚濁などの環境汚染問題は、現在、世界的な問題となっています。鉱山廃水や酸性泉は、共通して、酸性度が高く、ヒ素や鉛などの有害元素が多く含まれている傾向があります。上述通り、玉川温泉が流入する河川流域には、田沢湖の酸性化など、依然として解決されていない環境問題が残っています。日本では、鉱山による深刻な汚染は現在ありませんが、酸性泉が流入する河川の研究により、世界的に問題となっている鉱山開発に伴う環境汚染問題の解決の手掛かりを得られると期待しています。私たちは、秋田県玉川温泉が流入する河川をはじめ、秋田県川原毛温泉(図1B)や群馬県草津温泉(図1C)が流入する河川でも、有害元素の動的挙動の調査や酸性河川の中和を阻害する要因の解明を進めています。これらの研究結果をまとめた動画は、玉川温泉ビジターセンター(秋田県仙北市)で公開されています。
田沢湖の湖水が依然として酸性なのは、上述通り、玉川酸性泉が流入する河川水を導水しているためです。仮に、導水が止まったとしても、膨大な量の湖水を考えると、田沢湖の水質が改善されるか否か、改善されるとしても、どれくらいの歳月が必要かは不明です。私たちは、湖水の温度や化学成分の分布を測定し、田沢湖の湖水循環に関する研究も行っています。
また、田沢湖湖底の堆積物には、過去の噴火に伴う火山灰や周辺河川から流入した土砂、花粉などが残っています。これらの残存物は、過去の気候変動などの情報を持ってます。私たちは、田沢湖湖底から採取した堆積物を分析し(図2)、古環境の推測を行っています。
秋田県内には、名水百選(環境省選定)に選定された六郷湧水群やその近くの本堂城廻の湧水群(図3A)、鳥海山・飛島ジオパークのジオサイトであり平成の名水百選に選定された元滝伏流水、ゆざわジオパークのジオサイトの湧水群(力水や愛宕鉱泉)(図3B)などの湧水が数多くあります。これらの湧水の多くは、地域住民の生活や地域産業に欠かせないものになっています。私たちは、これら湧水の水質保全に不可欠な水質分析を継続的に行っています。
上述の酸性温泉により酸性化した河川や地下水についての調査、研究で得られた知識、技術、経験は、セルビアやタジキスタンで行っているJST-JICA 地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)の中でも活用されています。
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