近年、化石燃料枯渇等によるエネルギー問題や、CO2排出量増加に伴う地球温暖化に対する低炭素社会の実現という課題が挙げられている。この課題を解決する手段として、太陽光発電、風力発電を中心とした再生可能エネルギーの有効利用への期待が高まっている。その中でも風力発電は低コストで大規模発電が可能であり、効率的に優れた大型のプロペラ型風車が設置されている。しかし、一方でプロペラ型風車は騒音が大きく、都市部には設置が困難であるという欠点もある。また、分散化電源として地域における小規模発電装置への適用を検討した場合、低騒音・低コストで風向の変化にも対応可能な直線翼ダリウス型風車(図1)が適している。ダリウス型風車は揚力型のため比較的効率が高いが、プロペラ型より劣るので、風車効率の向上が課題である。
ダリウス型風車の効率を向上させるため、風車内部に円柱型ガイドを設けることによって、ガイド径が効率に及ぼす影響を調べる研究を行っている。円柱型ガイド付き風車の形状を図2に示す。直径450mmの円板上下2枚の間に供試翼を取付け角0deg、翼弦長の50%の位置で取り付けている。風車直径ld=400mm、翼枚数N=3枚、翼弦長lc=80、100、120mm、翼スパン長さlh=300mmとした。供試翼として使用する翼は、一般的に起動特性、出力特性においてダリウス型風車に適している、キャンバーをもたない対称翼NACA0020を用いる。翼スパン方向に同一断面を有する2次元翼形状であり、最大厚みは20%である。この直線翼ダリウス型風車は、2次元翼で構成されているので低コストで製作可能であるという利点を有している。
図3に円柱型ガイド付きダリウス型風車における周速比に対するパワー係数(風車効率)の実験結果を示す。図より翼弦長lc=80mmの場合、ガイドなし風車のパワー係数の変化について、周速比λ=0.2~0.8付近の低周速比領域では、パワー係数は小さく、λ=1.1より大きくなるとパワー係数が増大し、最大パワー係数Cpmax =0.125に到達した後、低下していく。低周速比領域でパワー係数が低い理由は、ダリウス型風車では風車が1回転する際に翼に流入する迎え角の変動が大きく、翼前縁において大きな剥離が発生するために十分な揚力を得ることができないからである。一方、円柱型ガイドを設けた風車では、周速比λ=0.2~ 0.6の範囲においてはガイドの効果が認められないが、周速比λ=0.6~ 2.0の範囲においてはガイドの効果が顕著に認められる。ただし、ガイド比rd/ld=0.6の場合はガイドの効果が認められない周速比の領域も存在する。
翼弦長lc=80mmにおいて、全てのガイド比の出力特性をまとめると、ガイド比rd/ldの増加に伴い、最大パワー係数に達する周速比が増大する傾向を示し、またガイド比rd/ld=0.35~ 0.5の範囲において、パワー係数が著しく変化しない傾向を示した。さらに、ガイド比rd/ld=0.45の周速比λ=1.5において、最も高い最大パワー係数を示し、Cpmax =0.172となった。ガイドがない場合の最大パワー係数はCpmax =0.125なので、円柱型ガイドを設けることにより、約37%の性能向上効果が得られた。
円柱型ガイドの効果について、流れ場から考察する。図4は風車の翼が回転角θ=0deg。の位置にある場合において、翼周りの流れと翼に作用する揚力と抗力を示した図である。ダリウス型風車において最もトルクが発生する位置は回転角がθ=0deg付近であることより、その位置における考察をする。主流風速Va=6m/s、周速比λ=1.5の条件では、翼の迎え角α=33.7degとなり、翼負圧面では大きくはく離すると思われる。流れが大きくはく離すると、翼に作用する揚力が大幅に低下するとともに抗力が増大する。以上の理由により、風車に作用するトルクが低下する。
一方、図5に円柱型ガイドが設けられた場合における翼周りの流れ場と翼に作用する揚力と抗力を示す。円柱型ガイドが設けられていると、ガイド前方では静圧が上昇するとともに、流速が減少する。従って、主流の流速が6m/sであっても翼周りでは流速が減少すると思われる。例えば円柱周りのポテンシャル流で考えると4.79m/sに減少し、翼に流入する迎え角はα=28.0degになる。それでも迎え角としては大きいので翼前縁ではく離するが、後方に円柱型ガイドが存在するので、はく離を抑制することができると思われる。この理由として、一つは迎え角と相対速度が減少することによりはく領域が減少することである。もう一つははく離しようとした流れが円柱型ガイドによって拘束されるため、はく離しにくくなるからである。また、ガイド比によりガイドの効果に差が生じるが、ガイド比が小さいとはく離の抑制効果が小さくなるので、周方向のトルクが小さくなり、パワー係数も減少すると思われる。逆にガイド比が大きくても、翼への相対流速が減少するために揚力が低下すると思われる。
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