2025年4月から秋田大学理工学部は総合環境理工学部としてリスタートしました。この稿のタイトルは、総合環境理工学部のキャッチフレーズとして提示されているものです。
私は社会システム工学科の中の社会基盤コースで、特にコンクリート工学の研究・教育に従事していますが、コンクリートってみなさんの周りに沢山ありますね。まだ研究をやることがあるのだろうか、と思いませんか?コンクリートの原材料のひとつであるセメント(粉体:ポルトランドセメント)は、Joseph Aspdinが1824年に発明してから200年、鉄筋コンクリートが開発されてから150年を経過していて世界中で使われています。しかし、我々はこのセメントを原材料として造られたセメント・コンクリートについて、すべてを知って使っているのでしょうか?
工学の世界では、ある「もの」をとりあえず使い始めはしたが、社会の新たな要求や、科学技術や分析技術の進歩に応じて、「それ」を使っていく上での様々な不具合等を修正し、そして改良し、さらに新たな性能を付与していく、という歴史があります。
特にコンクリート工学の分野では、例えば1990年以降の「冬の道路への塩(NaCl)の散布量」が増大し、交通量の増大にもよる道路構造物の劣化が大きな課題となっているのは、社会環境が大きく異なったことにもよります。このことにより、考えなくてはならない劣化メカニズムと新たな対策を講じることが、アカデミアの立場でも必要になっています。一方、コンクリートの新しい使い方も考えられています。ポルトランドセメントを製造する際のCO2の排出量を大幅に削減する技術であったり、(実はもともと硬化したコンクリートはCO2を吸収する性質があるのですが)、CO2を多く吸収するコンクリートを開発する等の研究技術開発も、近年は盛んになっています。
私はそのような背景からも、コンクリートの凍害劣化機構の解明と対策に関する研究や、海藻やサンゴ等を育成する基盤材料の研究開発などを行っています。「グリーン社会」とは「環境対策を実践した社会」であり「環境と経済の好循環を図る社会」とされているそうです。このことは、これからの社会システムを構築していくうえでの必須のキーワードです。新たな社会を築く技術を研鑽するうえで、あらためてソクラテスが提唱している「無知の知」について私自身も問うています。知っていることと知らないことを確実に整理しながら、新たな世界に突き進むことが、皆さんの「工学」の世界を築くことになるのだと思います。
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