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環境への取り組み

コンピュータで解き明かす、環境化学物質の生物への影響

九州・沖縄地区

2023年11月10日
九州・沖縄地区

九州工業大学 情報工学部

 本研究室では、「化学物質が自然やヒト間の体にどのような影響を与えるか」を調べる研究をしています。化学物質は、食品から家具、服、おもちゃなど、様々なものに含まれており、私たちの生活に欠かせないものです。例えば、熱が出たら、薬を飲みます。庭に草が生えてきたら、除草剤を撒きます。嫌な虫がお家にいたら、多くの方が殺虫剤を使うでしょう。コンビニやスーパーで売っているほとんどの製品は汚れや漏れを防ぐために、軽くて安いプラスチックで包装されています。このように、私たちは、生活のさまざまな場面で化学物質の恩恵を受けています。

 1960年代、アメリカのレイチェル・カーソンが発表した著書『沈黙の春』(Silent Spring)によって、私たちが使ったこれらの化学物質は空気や川・海などを通じて、ヒトやヒト以外の生物に悪影響を及ぼすことが広く認識されました。そこで、現在ヒトや野生生物・生態系に対して、毒性が強いとわかったジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)やダイオキシン類などの一部の化学物質の製造・使用・輸出は条約や法律で厳しく規制されています。

 しかし、私たちが日々使用する化学物質の量や種類は膨大で、その一つ一つに対してさまざまな生物実験を行い、毒性を調べていくことはできません。また、さまざまな発生源から環境中に放出された化学物質は、混ざり合い、複合的な作用を持つことが懸念されています。現在、世界中の多くの研究者が、環境中の化学物質がヒトや野生生物、生態系に及ぼす影響を調査していますが、化学物質がどのような影響を持つのかはよくわかっていません。そこで、私たちは、コンピューターを用いて化学物質がヒトなどの生物に与える影響(病気)を調べています(図1)。

図1 コンピューターで解き明かす、化学物質とその影響(病気)の関係図1 コンピューターで解き明かす、化学物質とその影響(病気)の関係

なぜ調べるの?

 私たちの研究で得た知識は、どのように化学物質を使うべきか、そして、どうやって私たちの健康や環境を守るべきかについての新しいアイデアを生み出します。また、研究から得られた知識は、化学物質を安全・安心に使用するための政策を提言する際の科学的根拠となります。私たちの研究により、化学物質による大規模な環境汚染を引き起こす前に、問題となりそうな化学物質や混合物を早く見つけて解決できるようになります。

どうやって調べるの?

 ヒトの体内に存在するたんぱく質は、約10万種類に及ぶと言われています。これらのたんぱく質が織りなす相互作用は、現在明らかとなっているだけでも数十万にも上ります。このような生体内分子の相互作用は生体内分子ネットワークとよばれています。化学物質の影響は、この生体内分子ネットワークを通じて引き起こされます。

 私たちは、コンピューターを用いて、ヒトの体の中にあるこの生体内分子ネットワークの中で、疾患に関わる部分と環境化学物質に反応する部分を見つけました。次に、この疾患に関わる部分と環境化学物質に反応する部分の距離を計算することで、化学物質がヒトの疾患に与える影響を定量的に評価しました。この結果、ヒトの生体内分子ネットワークに大きな影響を与える化学物質や化学物質に反応しやすいたんぱく質を同定することができました。

 現在、コンピューターを用いた手法により、どの化学物質がどのような疾患を引き起こしやすいのか?さまざまな化学物質が混ざった場合、どのような健康リスクにつながりやすいのか?ヒト以外の生物でも化学物質の健康リスクを評価できないか?などを調査しています。

学びとしては?

 本研究室の学生たちは、この研究に参加することで、化学物質が引き起こす影響について深く学び、化学物質によるリスクを軽減するための新しいアイデアを創出します。これは、未来の地球を守るリーダーを育てる第一歩です。

 これらの研究を通じて、私たちは地球の未来をより良くするための新しい知識を発見していくつもりです!

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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