はやりの生成AI(ここでは Copilot)に「生成AIは世界観を持てるか?」と尋ねてみました。返ってきた答えは、「生成AIは‟世界観のようなもの”を構築することはできるが、人間のような内的・主体的な世界観を持つわけではない」というものでした。さらに生成AIは、「外部から与えられた情報や学習したデータをもとに、整合性のある構造を組み立てる能力によって‟世界観らしきもの”を生成しているにすぎない」と説明しました。
一方で「人間の世界観」は、体験、感情、主観、意識、自己認識といった内的プロセスから形成されるものであり、生成AIにはそれらが存在しないため、「自分はこういう世界だと信じている」という内的な信念は持たないのだそうです。
もっともらしい答えです。生成AIと人間の違いについてはネット上で盛んに議論されていますから、その議論が生成AIの回答にも反映されているのでしょう。
私は工学部で物理学の授業を担当しているので、物理学を例に考えてみます。物理学は、人類が長い歴史の中で築き上げてきた世界観の一つと言えます。ここで‟人類”と書いたのは、物理学が個人ではなく、人間という集団の経験と歴史を背負っているからです。
一方、生成AIはネット上のデータから整合性のある説明を生成しますが、物理学を「信じて」いるわけではありません。たとえば、生成AIが作成した設計図をもとにロケットを製作し、もし打ち上げが失敗して人命が失われたとしても、生成AIに責任を問うことはできません。ロケットの機械部品や電子機器は、既知の法則や経験に基づき動作すると信じて人間が用いたものです。後から「生成AIを信じた」と弁解しても、責任はあくまで製作した人間にあります。
では、「信じる」とは何でしょうか。これは生身の人間にしか持ちえないものです。失敗や成功を含む多くの経験を通して、ようやく「信じる」に至るのです。単に言葉を知っているだけでは信じることはできません。これは各個人に当てはまる話です。
だからこそ、工学部では生身の人間として、失敗と成功の両方を体験してほしいと思います。そして物理学もまた、数えきれない試行錯誤と歴史を経て現在の姿に至っていることを学んでください。
| 掲載大学 学部 |
宮崎大学 工学部 | 宮崎大学 工学部のページへ>> |
| 私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 | 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。 これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。 |