トップページ > 生レポート!大学教授の声 > 二十歳の頃の夢は、生涯の礎

生レポート!大学教授の声

二十歳の頃の夢は、生涯の礎

2022年4月1日
福井大学
学術研究院工学系部門機械工学講座
永井 二郎

 私は現在、工学部機械・システム工学科の熱力学や伝熱工学の授業を担当し、沸騰の研究を行っています。

「沸騰って、研究の対象?」と不思議に感じる人が多いと思います。私も、30数年前に学生として卒業研究をするまでは、沸騰にナゾがあるとは思いもしませんでした。例えば、「大気圧の水は100℃では沸騰しない」とか「大気圧の水は本来は300℃になるまで沸騰しなくてもいいはずの液体だ」と言われて、信じられますか?詳細は省きますが、これらは本当のことです。詳しいことを知りたい人は、沸騰の専門書を調べるか私にメールで問い合わせて下さい。今行っている研究の一例を紹介します。高温の金属面に水滴を落下させるとどうなるのか?左側の写真は190℃の金属面に落下した場合ですが、水滴は表面と接触し(濡れて)激しく沸騰します。右側の写真は表面温度が230℃とより高温になった場合ですが、水滴は表面とあまり接触せず(濡れず)沸騰も穏やかです。このように、高温面で液体は接触しにくい(濡れにくい)のですが、いつどうなると接触するのかが解明されていません。このことは、鉄鋼製造の冷却制御高度化や超電導体の冷却安定化に深く関わります。研究室の学生さん達と一緒に、このナゾにチャレンジしています。

水滴が高温面に落下したときの様子

 初めて卒業研究で沸騰をテーマに取り組んだ二十歳過ぎの頃、私は壮大や夢(野望)を抱いていました。「人類がこれまで獲得した全ての知識を修得し、この世界の全てを把握し、あらゆる社会的な課題を解決する」こんな超人になろうと、半ば本気で思っていました。しばらくして、それが不可能であることを思い知らされるのですが、ただ、自然科学・人文社会を問わず様々な知識・知見を知りたい、という気持ちは持ち続けていますし、大学教員の使命にもつながっています。「若気の至り」という言葉もありますが、皆さんが二十歳前後の若い頃に確立された「夢」は、生涯を通じて皆さんを支えてくれるはずです。ぜひぜひ、人生が充実して楽しくなるような「夢」を培って青春時代を過ごして下さい。

2019年に研究室の学生さんと熱海に旅行に行ったときの写真(永井は、前列左から1人目)2019年に研究室の学生さんと熱海に旅行に行ったときの写真
(永井は、前列左から1人目)
※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

関連記事

2020-07-03

環境への取り組み

水圏環境における微量金属測定

金沢大学理工学域

2022-03-04

なんでも探検隊

鹿児島の天然資源・金属伝統工芸品を探る

鹿児島大学工学部

2023-01-13

Pict-Labo

金属の流動と凝固が織りなす模様

弘前大学理工学部

2019-02-01

生レポート!卒業生の声

充実した大学生活を送るために

香川大学創造工学部

2023-12-22

なんでも探検隊

室温における超臨界流体水素の相転移

岩手大学理工学部

2019-08-09

生レポート!卒業生の声

世界中の生活を支える、鉄道事業の責任とやりがい。

豊橋技術科学大学

福井大学
工学部

  • 機械・システム工学科 機械工学コース
  • 機械・システム工学科 ロボティクスコース
  • 機械・システム工学科 原子力安全工学コース
  • 電気電子情報工学科 電子物性工学コース・電気通信システム工学コース
  • 電気電子情報工学科 情報工学コース
  • 建築・都市環境工学科 建築学コース・都市環境工学コース
  • 物質・生命化学科 繊維・機能性材料工学コース、物質化学コース、バイオ・応用医工学コース
  • 応用物理学科

学校記事一覧

生レポート!大学教授の声
バックナンバー

このサイトは、国立大学55工学系学部長会議が運営しています。
(>>会員用ページ)
私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。
これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。