私は現在、工学部機械・システム工学科の熱力学や伝熱工学の授業を担当し、沸騰の研究を行っています。
「沸騰って、研究の対象?」と不思議に感じる人が多いと思います。私も、30数年前に学生として卒業研究をするまでは、沸騰にナゾがあるとは思いもしませんでした。例えば、「大気圧の水は100℃では沸騰しない」とか「大気圧の水は本来は300℃になるまで沸騰しなくてもいいはずの液体だ」と言われて、信じられますか?詳細は省きますが、これらは本当のことです。詳しいことを知りたい人は、沸騰の専門書を調べるか私にメールで問い合わせて下さい。今行っている研究の一例を紹介します。高温の金属面に水滴を落下させるとどうなるのか?左側の写真は190℃の金属面に落下した場合ですが、水滴は表面と接触し(濡れて)激しく沸騰します。右側の写真は表面温度が230℃とより高温になった場合ですが、水滴は表面とあまり接触せず(濡れず)沸騰も穏やかです。このように、高温面で液体は接触しにくい(濡れにくい)のですが、いつどうなると接触するのかが解明されていません。このことは、鉄鋼製造の冷却制御高度化や超電導体の冷却安定化に深く関わります。研究室の学生さん達と一緒に、このナゾにチャレンジしています。
初めて卒業研究で沸騰をテーマに取り組んだ二十歳過ぎの頃、私は壮大や夢(野望)を抱いていました。「人類がこれまで獲得した全ての知識を修得し、この世界の全てを把握し、あらゆる社会的な課題を解決する」こんな超人になろうと、半ば本気で思っていました。しばらくして、それが不可能であることを思い知らされるのですが、ただ、自然科学・人文社会を問わず様々な知識・知見を知りたい、という気持ちは持ち続けていますし、大学教員の使命にもつながっています。「若気の至り」という言葉もありますが、皆さんが二十歳前後の若い頃に確立された「夢」は、生涯を通じて皆さんを支えてくれるはずです。ぜひぜひ、人生が充実して楽しくなるような「夢」を培って青春時代を過ごして下さい。
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