私は岩手大学理工学部システム創成工学科に所属している4年生です。卒業研究として、「ヒ素」に関する研究をしています。土壌中のヒ素を「不溶化」という方法によってその場にとどめ、除去しやすくするとともに、ヒ素の再溶出を抑制する技術に関する研究です。ヒ素は主に3価(As(III))と5価(As(V))の状態で存在します。実験では水試料を用いています。まず、毒性が比較的低く除去もしやすいAs(V)に酸化するとともに、共沈作用を持つ鉄を含む鉄酸カリウムを酸化剤として用いることで、As(V)を鉄と共に不溶化します。しかし不溶化されたAs(V)が還元状態にさらされると鉄が還元され、不溶化されたAs(V)が再溶出してしまいます。そこで不溶化剤としてアルミニウムを用いたり、鉄とアルミニウムを併用することで、さらに還元剤もいろいろな物質を用い、再溶出の比較検討をすることで不溶化しやすく再溶出しにくい技術を研究しています。経時的に試料を採取し、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いて試料中のヒ素の濃度を測定しています。
私は自分の研究を通して、大学で学ぶということはどういうことなのかと考えました。大学で学ぶということは、複合的な課題を解決するための手法を身に付けることであると思います。私の研究は非常に複雑な内容であると思います。ヒ素の不溶化と再溶出に関係している要因が多岐にわたっており、何種類もの試料を比較しながら実験を行わないといけないからです。実験がうまくいかないこともたくさんあります。ですが、実験をするたびに思うような結果が得られなかった原因は何なのか、どこを改善すれば良いのかを考え、次の実験に生かすというサイクルを学術研究を通して学ぶことが重要なのではないかと思います。また、基礎知識を身に付けるために、大学1~3年生で学ぶことも、4年生での研究生活を充実させるためには大切だと感じました。私は来年から大学院へ進学することが決まっています。さらに自分の研究を深堀りしつつ、知識を身に付けて研究生活をより良いものにしたいと思います。
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