私は東京電力福島第一原子力発電所(1F)に隣接した分析施設で、放射線管理や安全管理の仕事をしています。高校時代に東日本大震災を経験し、1Fの事故はラジオで聞いていました。当時の自分へ、将来そこで働くことになると伝えたら、目を大きくして驚くことでしょう。
今の仕事に就いたきっかけは、大学での研究活動です。研究を始める前は、高校の理科教員になることを目標にしていましたが、研究を始めるとそちらが面白くなり、それまで頑張っていた教職講義の受講を全てやめました。周りからはもったいないと散々言われましたが、現在もこの選択は正しかったと思っています。
研究のテーマは、1Fの事故によって散布された放射線源の分布を、物理シミュレーションと機械学習を用いて推定することでした。物理シミュレーションと機械学習は、自分で一からプログラミングをして計算する必要があり、とてつもなく大変でしたが、初めて放射線の物理現象を自分のプログラムで再現したときや、遮蔽物で隠れた線源の位置を高精度で推定できたときの達成感は今でも忘れません。その後は、1Fの廃炉措置に貢献したいと考え、現職の採用試験のみを受験しました。このことも周りから心配されましたが、研究のテーマが現職に深く関連していたので自信を持って面接に臨むことが出来ました。
無事に採用され現在に至るわけですが、大学時代に培った放射線の知識や問題解決能力はとても役に立っています。最近は新人研修や外部講師の補助として放射線について教育する機会も増え、大学の教職講義も無駄ではなかったと感じています。大学での経験が直接将来の役に立つかは分かりませんが、興味を持ち手を動かすことで得た知識と能力は、自分を支える大きな軸となっています。これから大学で学ぶ方は、途中で変えても構わないので、まずは自分が今一番興味のある分野について手を動かして追求していくことをおすすめします。
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