岩手大学理工学部には、持続可能な社会づくりを実現するための技術課題に取り組む「ソフトパス理工学総合研究センター」があります。この研究センターでは、教員個人の研究レベルを高めると同時に、異なる研究分野や社会との連携を深めることで、研究を活性化し、地方大学にありながら世界レベルの研究拠点の形成を目指して活動しています。
日本の農林水産業においては、高齢化や担い手の減少などによる労働力不足が問題となっています。この問題を解決するために、農林水産業・食品加工業におけるロボットの実用化が国の目標として掲げられています。また、岩手大学理工学部にはロボット研究者である教員が複数在籍しており、農林水産関連企業から多くのニーズが寄せられています。このような背景から、2015年にソフトパス理工学研究センターに「農林水産ロボティクス研究部門」が設置されました。現在は、水中資源調査・管理用ROVの研究開発と人工知能による小型船舶安定制御を実施しています。
岩手県のアワビとウニの漁獲高はそれぞれ全国トップクラスです。アワビやウニの漁の際には海上で小型船を自由に操り、任意の位置に留めなければなりません。この船舶制御を人の代わりに行う自律安定化システムを研究しています。
海上で船舶を自由に制御するためには、船舶の加速度成分を正確に予測できなければなりません。船舶の加速度aは、フリーダイナミクスによる加速度aF、動力による加速度aA、 外乱による加速度aDにより決まります。船舶の加速度aは海底画像処理とジャイロセンサを用いて計測でき、 動力(スラスタ)による加速度aAはスラスタへ与えた指令値とその際のaの対応から求めることができます。
しかし、フリーダイナミクスによる加速度aFは船体の形状や速度などで異なり、数式で表すことは困難なため、人工知能(力学系学習木)によって推定しています。実験機を用いて加速度aFを学習・推定した結果、実際のフリーダイナミクスによる加速度と一致する結果が得られています。
これで、加速度のすべての成分を予測でき、外乱の影響を打ち消すための命令をスラスタに与えられます。現在は学内の造波水槽を用いて波の影響を打ち消すための実験を進めるとともに、実際に海で使用できる実験機の開発を行っています。
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