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なんでも探検隊

 

海底・湖底表層のメタンハイドレート -包有ガスの起源解析-

 
2010年9月17日
北見工業大学 工学部
(未利用エネルギー研究センター ガス分析グループ)

はじめに

メタンハイドレートは、水分子が作るカゴ状のフレーム内部にメタン分子を閉じこめた結晶です。メタンは天然ガスの主成分であり、自然界では海底・湖底堆積物中や永久凍土中などの低温・高圧環境下で安定に存在しています。メタンハイドレートは将来のエネルギー資源として注目される一方、地球環境システムの中でどのような役割を果たしているのか、興味が持たれています。例えば、メタンハイドレートの存在する場所の温度・圧力条件が何らかの原因で変化すれば、結晶が水とメタンに分解してしまう可能性があります。そうなると、メタンハイドレート鉱床は不安定になって海底地滑りを引き起こしたり、CO2より強力な温室効果ガスでもあるメタンの急激な放出が地球規模の気候変動に影響を与えるかもしれません。

表層型メタンハイドレートの採取

北見工業大学未利用エネルギー研究センターでは、海底や湖底の近くに存在する「表層型」と呼ばれるメタンハイドレートについて調べています。例えば、メキシコ湾や日本の上越沖などの海底でメタンハイドレートの露頭が発見されていて、研究者の間で注目されています。海底・湖底から天然ガスがバブルとなって湧き出ているところは音響探査(魚群探知機と同じ)でわかるため、そのような場所を探して、コアラー(堆積物コアを採取する器械、おもりを付けた「鉄パイプ」をウィンチで上げ下げする)を落とし、表層堆積物中のメタンハイドレートを回収します。メタンハイドレートは塊状、層状、脈状などさまざまで、野外調査では分解してしまわないうちに-196℃の液体窒素容器に入れて保存します。我々はロシアなどとの国際共同研究により、オホーツク海サハリン島沖とバイカル湖の2箇所で調査を毎年行なっています。

ロシア・バイカル湖での調査風景

ロシア・バイカル湖での調査風景

ハイドレートに含まれるガスの分析

調べている項目は、メタンハイドレートに含まれているガスや水、周囲の堆積物などいろいろありますが、ここではガスに絞って解説します。「メタンハイドレート」といっても、実際にはメタン以外にもさまざまなガスが含まれています。エタン・プロパン・ブタン・CO2・硫化水素などです。そして、メタンやプロパンなどの炭化水素ガスを作る炭素・水素の安定同位体比を調べることで、そのガスの起源が推定できます。ハイドレートのカゴの中に閉じこめられているガスと、周囲の堆積物間隙水に溶け込んでいるガスとは、成分などがやや異なります。ハイドレートのカゴにも大小があり、カゴの中に入れる分子とそうでない分子があるからです。こうした情報から、どのように結晶が生成し、維持されているのか、あるいは今まさに分解しているところなのか、を理解しようとしています。

ロシア・バイカル湖のメタンハイドレート

ロシア・バイカル湖の
メタンハイドレート

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