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海洋エネルギーへの挑戦

2015年11月12日
長崎大学 工学部 工学科 電気電子工学コース

地球温暖化の問題、原子力発電所の事故を受けて、太陽光、風力、潮力・波力、バイオマス等の再生可能エネルギーの導入、普及が急がれています。その中で、風力発電は発電量に対して設置・運用にかかる費用が比較的安価であることから、世界中の風力発電の発電量はこの10年の間に10倍になるほど、導入、普及が進んでいます。現在、一般家庭600世帯分の電力(2MW)を賄うことができる風力発電システムが主に導入されていますが、今後は一般家庭3000世帯分もの電力(10MW)を供給することができる、海上設置型の超大型風力発電システム(洋上風力発電)が導入されていくことになると言われています。

長崎大学工学部では、長崎県の持続的発展だけでなく地球規模の課題解決にも貢献できる、海洋エネルギー分野の教育研究に重点を置いています。電気電子工学コースの樋口・横井研究室では、長崎県の企業と連携しながら、風力発電用の新型発電機の開発や新しい波力発電方式の研究を行っています。

洋上風力発電システムでは、故障や摩耗等による劣化のためのメンテナンスを海上で行わなければならないので、その費用は割高になり、電気代も高くなってしまいます。そのため、ほとんどメンテナンスがいらない発電システムが求められます。現在最も多く使われている発電機には、ブラシとスリップリングと呼ばれる定期的なメンテナンスが必要となる部品が組み込まれているだけでなく、風車と発電機の間には回転速度を調節するために増速機(ギア)と呼ばれるメンテナンスが必要な機構が使われています。開発中の発電機はこれらの部品や機構を用いることなく発電することができます。写真1は2kWの試作機です。この発電機には、図1のようにダイオードと呼ばれる電流の流れる方向を制限する素子が使われており、図2に示す特殊な波形の電流で制御することで、様々な風速に対応しながら高効率で発電することができます。

写真1 半波整流ブラシなし同期発電機写真1 半波整流ブラシなし同期発電機
図1 新型発電機の巻線図図1 新型発電機の巻線図
図2 励磁電流図2 励磁電流

振り子型波力発電は、海の波の上下方向の運動エネルギーから、機械振り子の回転運動を介して、電気エネルギーを作る新しい発電方式です。写真2は、水槽に浮かべた振り子型波力発電の実験装置です。水槽と言っても、縦25m、横2mの大きさがあり、波を造ることができます。実験では、この波によって振り子を回転させて電気を作り出すことに成功しました。発電量はまだまだ少ないですが、今後の研究によって、将来のエネルギー問題解決に貢献します。

写真2 振り子型波力発電の実験装置写真2 振り子型波力発電の実験装置
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