石油や天然ガスなどの化石資源価格の高騰、二酸化炭素による地球温暖化、そして震災後の原子力エネルギーの安全利用への懸念から、太陽光、風力、そして植物バイオマスなど、使ってもなくならない再生可能なエネルギーや資源を利用する技術の開発が世界中で行われています。世界地図をみると日本の陸地は本当にちいさくみえます。しかし、広大な海に囲まれており、豊富な海洋資源を大いに利用できる立場にあります。広島大学工学部では、微生物の力を使い、コンブや青のりなどの海藻をエネルギーや有用物質に変えるための技術開発を行っています。
海藻には、アルギン酸や寒天などのヒトが栄養として使うことが難しい糖類がたくさん含まれています。しかし、微生物の力を借りれば、これらを天然ガスの主成分であるメタンに変えることができます。ただ、海藻に含まれる食塩などの塩類がメタンの生成を妨げることが問題でした。我々は、日本の干潟の中にいる微生物群が海水位の塩分があっても元気にコンブを分解してメタンをつくることを発見しました。この微生物群を用いれば、コンブを高効率にメタンに変換できることが期待されます。
海洋微生物のラビリンチュラ(オーランチオキトリウム属)は、ドコサヘキサエン酸やアスタキサンチン、スクアレンなど高機能性、高付加価値脂質をつくりますが、残念ながら、ラビリンチュラは主要な海藻糖質を使うことができません。我々は、ある微生物が、海藻糖質の一つであるマンニトールをラビリンチュラが消費できるフルクトースに変換できることを発見しました。この微生物を使いマンニトールから先に紹介した有用な油をつくり出すことに成功しました。同様に、アルギン酸や寒天などの他の海藻糖質からの油脂生産が期待されます。
海洋藻類にはレアメタル・レアアースを含むさまざまな有用金属イオンや毒性のある重金属が濃縮されていることが知られています。我々は、日本国内の海洋環境から集積・単離した海洋性光合成細菌の中に、海藻に含まれるテルルなどのレアアースやカドミウム、亜鉛などの重金属類に対して回収能を持つものを発見しました。本発見を発展できれば、海洋からのレアメタル・レアアース資源の確保、および海洋環境浄化が期待できます。
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