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環境への取り組み

大気圧放電プラズマによる空気・水環境の改善

九州地区

2018年12月21日
九州地区

大分大学 理工学部
創生工学科 電気電子コース
放電プラズマ研究室(http://elecls.cc.oita-u.ac.jp/plasma/)

大分大学理工学部創生工学科電気電子コースの放電プラズマ研究室(教授・金澤誠司、准教授・市來龍大、助教・立花孝介)では、大気圧放電プラズマによる空気・水環境の改善のための研究を行っています。ここではその基礎となる放電の発生と生成されるプラズマの特性、応用としての水処理について紹介します。

大気圧放電プラズマの生成と測定技術

水は0℃以下では氷となり固体ですが、室温では液体の水として私たちの生命維持には必須のものとなります。徐々に温度を上げると100℃で水蒸気となり、さらに2000℃近くになると水素と酸素に解離します。もっと温度が高くなると、それらの分子や原子から電子とイオンが生成されます。この状態がプラズマで、電離気体とも呼ばれています。プラズマは通常の気体とは異なり、高エネルギー電子、活性種(ラジカル)、光、高電界、流れや衝撃波といった多くの要素を内包するため物理化学的に極めて高い作用力を秘めています。したがって、空気や水あるいは土壌の環境改善に利用できることになります。

プラズマをつくるには熱では大きなエネルギーがいるため現実的ではなく、高電圧を用いた放電が効果的な発生方法となります。図1は気液混相空間で生成する放電によるプラズマの様子です。このように発光するプラズマのなかに有害なガスや液体を分解するのに有効なラジカルが多く生成しています。研究室では、発光分光法、レーザ誘起蛍光法、電子スピン共鳴法など種々の手法を構築し、ラジカル計測の研究拠点を目指しています。そのなかでも酸化力が高いヒドロキシルラジカル(OHラジカル)について注目し、われわれの研究室独自の計測技術を開発してきました。特に、試薬を用いてラジカルをトラップし、蛍光観測する化学プローブ法は、水中でのOHラジカルの計測手法として注目され、多くの研究者から使用されるだけでなく、産業界からの引きあいも多い手法となっています。

図1 気液混相空間における放電プラズマの様子
(左上より、水中放電、水面上放電、水面へ照射されるプラズマジェット、流水膜へのストリーマ放電)

大気圧放電プラズマの水処理への応用

放電プラズマによる水処理技術は、これまでのオゾンや促進酸化処理に代わる、次世代の方式としての可能性を秘めています。特に、OHラジカル等の酸化力の高いラジカルを有効に活用できれば、難分解性有機化合物の分解をはじめ微生物やウイルスなども同時処理して水の殺菌までができることになります。

われわれはこれまでに円筒型のリアクタの内壁面に流水を供給し、バリア放電で処理する方式のものを開発してきました(図2)。繊維工場から排出されるような着色水を透明な水にするだけでなく、染料成分を完全に無機化することができます。処理効率を高めるために、流水を壁面に沿って旋回できるよう"コアンダ効果"を導入しました。コアンダ効果とは、流れが近くの壁に引き寄せられる効果のことで、内壁面に螺旋加工を付加することで、旋回流が得られ、処理水の滞留時間が長くなることや放電プラズマと処理水の接触や混合が促進されて、エネルギー効率の向上につながっています。

図2 放電プラズマリアクタの概略図と青色染料の処理時間ことの脱色の様子図2 放電プラズマリアクタの概略図と青色染料の処理時間ことの脱色の様子

放電プラズマは電気現象のなかでも唯一実際に目で見ることができる現象です。そのことを実感できる大気圧プラズマにはまだまだ研究の未踏領域が多く残されています。大気圧放電プラズマには日本が進めるSociety 5.0への貢献や世界的な取り組みであるSDGs(持続可能な開発目標)の課題解決に寄与できる潜在力があると考えています。

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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