
2025年12月5日
関東地区
埼玉大学 大学院 理工学研究科
川本 健
持続可能な社会づくりに向けて、現在、世界中の多くの国々や地域で、循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行が進められています。循環経済は、資源採取、製造、消費、廃棄といった線形経済とは異なり、限りある資源の再利用や効率化を通じて、廃棄物の発生量を最小限に抑えつつ付加価値を最大化するシステムです。この資源の再利用や効率化に、廃棄物のリユースやリサイクルは重要な鍵を握ります。
急激な人口増加とともに急速に都市化・工業化が進行している開発途上国の都市域では,廃棄物の排出量は増加の一途をたどり,廃棄物の不適切な処理・処分に起因する環境劣化や健康被害の発生が顕在化しています。特に,東アジアの都市域では,開発に伴う建設廃棄物の発生量が急増していますが、建設廃棄物に含まれる有害廃棄物の管理も徹底されておらず,その大半は適切な処理が行われていません。このように開発途上国における循環経済移行には、建設廃棄物を含む廃棄物問題の解決やリサイクル促進が重要な課題として位置付けられています。
埼玉大学では、2017-2023年度JST-JICA 地球規模課題対応国際科学技術協力事業(SATREPS)の支援を受けて、「ベトナムにおける建設廃棄物の適正管理と建廃リサイクル資材を活用した環境浄化および及びインフラ整備技術の開発」を埼玉県環境科学国際センター及び国立研究開発法人国立環境研究所と連携して実施しました。このSATREPS事業で対象としたベトナムも、開発圧力の高い都市域や工業地帯を中心に建設廃棄物の排出量が増加しています。しかし、建設廃棄物の処理・処分の大半は直接埋立や投棄であり、リサイクルや再資源化に向けた取り組みは十分に行われていません。本SATREPS 事業はこれらを背景とし、ベトナム建設リサイクルを積極的に推進するために必要不可欠となる、建設廃棄物の実態把握、建設リサイクル資材の品質基準整備、建設リサイクル資材を活用した新たな技術開発等を進めることを目的として実施しました。
「建設廃棄物の実態把握」では、建築解体現場や建設現場から最終処分や不法投棄に至るまでのマテリアルフローを調べ、ハノイ市では非認可企業業種が回収した建設廃棄物の半分は不法投棄されていることが明らかとなり、今後不法投棄を減らすために非認可企業の建設廃棄物回収活動をどのように指導していくかが課題として明確になりました。また、ハイフォン市では建廃発生量将来予測を行い、2020年をベースとして2050年には建廃発生量が約5倍に増加する見込みであることを明らかにしました。これらの成果は、建設リサイクル推進の重要性を現地関係者に示すために有効であり、建設リサイクルに関するワークショックを数多く開催しました。さらに、建設リサイクルを実施するために重要となるソースコントロールの徹底を目指し、現場建設解体分別ガイドラインを策定しました(ベトナム建設省令MOC Decision No.852/QD-BXD, 2022年)。「建設廃棄物から製造される建設リサイクル資材の品質基準整備」では、ベトナムにおいて今後も大きな建設需要が見込まれる道路工事に注目し、道路建設に用いられる再生路盤材の積極的な活用(建廃リサイクル率の向上)を目指して、現地関係機関と共同でベトナム国家技術基準(TCVN):道路用再生路盤材の品質基準)を策定しました(TCVN 13694:2023)。
「建設リサイクル資材を活用した新たな技術開発」では、建設廃棄物由来再生材を活用した新たな保水性強化型路盤材開発等を目指し(付加価値向上)、室内試験から得られた研究成果を国際学術雑誌にて積極的に発信しました。具体的には、建廃破砕時に発生する廃コンクリート細粒分の有効利用ならびに処理困難物とされる軽量気泡コンクリート廃材の有効利用を目指しました。そして、顆粒状軽量気泡コンクリート廃材混合再生路盤材の混合は、路盤材強度の低下を引き起こすものの、その混合割合を適切にコントロールすることにより格段に保水性を強化できることを明らかにしました。これらの研究成果をベースに、建設リサイクル資材を用いた透水性舗装施工試験を実施しました。
埼玉大学では研究機構戦略研究センター「循環型ゼロエミッション社会形成研究領域」にて、廃棄物の適正管理・処理・リサイクルに焦点を当て、「循環経済の形成」に不可欠となる産業廃棄物の有効活用技術開発・研究を、多国間における連携と共通認識を基軸に、国内外の強固な産学官連携ネットワークに基づき今後も推進していきます。
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