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放電を操る科学 ― プラズマの生成と消滅の技術

2025年9月19日
金沢大学 理工学域 電子情報通信学類
電気電子コース 環境電力工学研究室

 みなさんが知っている電気の放電を、うまくコントロールすると「プラズマ」という特別な状態を作ることができます。特に、1万度(10,000K)を超える超高温を持つ「熱プラズマ」は、私たちの生活や産業に役立つさまざまな応用につながっています。

 熱プラズマの代表的な応用の一つが、ナノ粒子の生成です。ナノ粒子とは、1ナノメートル(1/1,000,000,000m)から数百ナノメートルほどの大きさを持つ超微小な粒子のことです。熱プラズマの中では、原料となる物質が非常に高温で完全に蒸発し、原子レベルまで分解されます。その後、急激に冷やされることで、蒸発した原子が集まり、ナノスケールの粒子が自然に「核」として生まれます。これにより、大量かつ均一なナノ粒子を作ることが可能になります。こうして得られたナノ粒子は、医療材料、触媒、電子デバイスなど幅広い分野で活用されています。

 プラズマは、材料表面の改質や半導体の製造工程にも使われます。たとえば、金属やセラミックスの表面にプラズマを照射すると、極めて短時間で高温にさらされ、表面の原子構造が変わります。その後の冷却過程で新しい性質が生まれ、耐摩耗性や耐腐食性が高まるといった効果が得られます。また、セラミックコーティングや硬質膜形成などの技術にも応用され、航空機のエンジン部品や電子部品の長寿命化に貢献しています。半導体製造工程においては,微細加工のためにプラズマが用いられます。回路作成のために用いた有機薄膜を取り除くために水蒸気のプラズマを用いることで,環境負荷を低減する新しい半導体製造プロセスの実現を目指して研究開発を進めています。

 一方で、電力の世界では放電・プラズマを速やかに消すこと(消弧)が重要です。回路を開いた瞬間に電流が途切れず「アーク」という火花が残ってしまうと、機器の破損や事故・大規模な停電につながります。そこで現在では、圧縮空気でアークを冷やす、SF₆(六フッ化硫黄)や代替ガスでアークを消す、真空中で自然に放電を消す、といった方法が用いられています。これらはすべて「アークが維持できない環境を作る」工夫であり、電気の安全利用を支える基盤となっています。

 環境電力工学研究室では、こうしたプラズマの応用や新しい原理に基づく消弧技術について、実験とシミュレーションの両面から研究を進めています。電力工学を環境との調和という視点から捉えることを目標に、高電圧・大電流工学を基盤とした新しい電力技術の開発に挑戦しています。

図 熱プラズマ生成装置とシミュレーションで再現した温度場 ナノ粒子材料生成に最適な温度場や条件は?図 熱プラズマ生成装置とシミュレーションで再現した温度場
ナノ粒子材料生成に最適な温度場や条件は?
図 ノズル中のガスアーク放電と真空アーク放電
このような放電を如何に早く消すかが安全な電力のカギ
図 半導体製造工程に用いる水蒸気プラズマの発光様相.赤色は水素原子からの発光図 半導体製造工程に用いる水蒸気プラズマの発光様相.赤色は水素原子からの発光
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