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環境への取り組み

応用化学分野におけるSDGs達成および環境保全への取り組み

九州・沖縄地区

2025年10月17日
九州・沖縄地区

熊本大学 工学部
材料・応用化学科
応用生命化学教育プログラム及び応用物質化学教育プログラム

 熊本大学は、阿蘇地域および天草地域に2つの国立公園をもつ豊かな緑と水に恵まれた風土・環境にあります。近年、熊本大学SDGs宣言を発し、学生と教職員が“One Team”となって、教育及び研究活動において多角的に環境保全と持続可能な社会の構築に努めています。本稿では、工学部材料・応用化学科 応用生命化学教育プログラム及び応用物質化学教育プログラムで推進されている学術研究の中で、SDGs達成および環境保全に関連する取り組みをご紹介します。

紹介取組一覧

  1. 中低温動作を目指した小型燃料電池開発
  2. 燃料電池触媒の非白金化
  3. 膜分離によるCO₂濃縮回収技術の開発
  4. 自動車触媒における省貴金属技術
  5. 半導体ナノシートを利用した水分解光触媒
  6. 環境計測ガスセンサの開発
  7. 高密度流体を利用する農林水産資材の総体的有効利用システムの構築
  8. 『くまだいSDGs推進事業』採択プロジェクト
  9. 熊本大学カーボンニュートラル

1. 中低温動作を目指した小型燃料電池開発

 燃料電池は化学エネルギーを電気エネルギーに変換できるデバイスとして、カーボンニュートラル社会の実現に大きく貢献することが期待されています。畠山一翔 助教と伊田進太郎 教授らの研究グループでは、さらなる効率向上および利便性向上を目指して、低中温域で動作する水素燃料電池の開発が進められています。最近、粘土鉱物から得られたナノシートを精密に積層させることで、燃料電池で重要な役割を果たす、新しい無機固体電解質膜の開発に成功しています。従来の燃料電池は高温作動や環境負荷が大きいという課題がありましたが、このナノシートからできた電解質膜は低中温域で高いレベルでプロトン伝導性と水素バリア性、化学的安定性を示すことがわかりました。その結果、広い温度範囲(-10~140˚C)で作動可能な燃料電池を実現し、90˚Cで最大264 mW/cm²の高出力を達成しました。次世代燃料電池車向け材料として期待されます。

図1 ナノシートの原子間力顕微鏡像(左)とナノシートを積層して作製した無機ナノシート積層膜の写真(右)。図1 ナノシートの原子間力顕微鏡像(左)と
ナノシートを積層して作製した無機ナノシート積層膜の写真(右)。
図2 無機ナノシート積層膜を固体電解質とした燃料電池の90˚C(相対湿度100%)における評価結果。図2 無機ナノシート積層膜を固体電解質とした
燃料電池の90˚C(相対湿度100%)における評価結果。

2. 燃料電池触媒の非白金化

 大山順也 准教授らの研究グループでは、燃料電池の酸素還元反応において高い耐久性を持つ非白金触媒(コバルト触媒)の開発に成功しています。この触媒は、一般的に耐久性が低いという非白金系触媒の課題を解決し、水電解による水素生成においても従来の鉄系触媒より著しく高い耐久性を発揮しています。今回の成果は、燃料電池や水電解触媒の非白金化と低コスト化を一層加速させることが期待されています。

3. 膜分離によるCO₂濃縮回収技術の開発

 地球温暖化対策には、これからのCO₂排出を削減する施策に加え、現在大気中に存在するCO₂の除去も有効です。國武雅司 教授らの研究グループでは、大気中のCO₂を選択的に通過させることができるポリマー超薄膜を開発しています。この膜は、例えば、エアーフィルターのように設置場所やサイズに左右されずに機能を発揮し、特に大きなエネルギーを必要としないというメリットがあります。各家庭で設置使用できる仕様でCO₂を回収、燃料化する技術が開発できれば、エネルギーの地産地消が実現し、環境・エネルギー問題の根本的解決が期待できます。

4. 自動車触媒における省貴金属技術

 自動車の排ガスを清浄化する装置には、プラチナやパラジウム、ロジウムなどの希少で高価な貴金属が多く使われています。町田正人 教授らの研究グループでは、これらの貴金属の働きを最大限に引き出せる新しい触媒を開発し、貴金属の量を大幅に減らしても、高い浄化性能を発揮できる触媒の開発に取り組まれ、多くの成果を報告しています。

図3 (a)Ni/CeO2、(b)PtPd/CZ、および(c)複合化粉末触媒の排気浄化性能。(a)と(b)の触媒を半量混合することで反応温度が低下して高い活性を達成した。CZ = CeO2-ZrO2。図3 (a)Ni/CeO₂、(b)PtPd/CZ、および(c)複合化粉末触媒の排気浄化性能。
(a)と(b)の触媒を半量混合することで反応温度が低下して高い活性を達成した。CZ = CeO₂-ZrO₂。

5. 半導体ナノシートを利用した水分解光触媒

 植物の光合成システムのように、太陽光エネルギーを利用して、水分子を分解し、水素や酸素を製造するシステムの開発が盛んに行われています。近年、吸収した太陽光エネルギーを効率よく水分解反応に利用できるナノ材料として、半導体の超薄膜(ナノシート)が注目されています。伊田進太郎 教授らの研究グループでは、従来開発されてきた紫外領域より低エネルギーの可視領域の光を有効に活用できる新規な半導体ナノシートの合成からその光触媒としての利用展開まで、水分解を可能とする光触媒の開発に取り組まれています。

図4 水分解光触媒反応のモデル図。図4 水分解光触媒反応のモデル図。

6. 環境計測ガスセンサの開発

 大気環境保全のための技術開発においては、原因汚染物質の排出を抑えるだけではなく、所謂モニタリング測定と言われる、現状をできるだけリアルタイムで容易に把握するための計測技術も重要な開発課題です。木田徹也 教授らの研究グループでは、現在、ガス吸着によって物性(キャリア濃度)が大きく変化する酸化物半導体のナノ材料や、固体電解質を用いることで、小型かつ安価で、リアルタイム計測によるフィードバック制御が可能なセンサの開発が試みられています。

7. 高密度流体を利用する農林水産資材の総体的有効利用システムの構築

 製造・生産現場において使用されている溶剤のうち有機溶剤は、環境に負荷が高く、より低環境負荷溶剤への代替えが望まれています。その代替溶剤の有力な候補の一つに超臨界二酸化炭素や亜臨界水などの高密度(高圧)流体が注目されています。佐々木満 准教授らの研究グループでは、これらを利用して、様々な農林水産資材や食品加工残渣から収益性の高い有用な化合物を産出するための技術開発が行われています。

8. 応用化学分野の環境関連『くまだいSDGs推進事業』採択プロジェクト

8-1: 二酸化炭素をエネルギー資源化する高活性電極の開発(R4年度採択)
8-2: 二酸化炭素還元複合ナノ触媒の開発(R4年度採択)
8-3: 空気中の酸素を酸化剤とした鉄系酸化物による酸化反応触媒系の構築(R6年度採択)

 詳しくは下記関連サイトでご覧ください。

9. 熊本大学カーボンニュートラル

 熊本大学は、2050年カーボンニュートラル実現に挑戦しています!

 詳しくは下記特設Webサイトをご覧ください。

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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