2016年1月21日
九州地区
宮崎大学 工学部
宮崎大学は、地域から世界へ発信できる高度な学術研究を推進することとし、「大学の研究戦略に基づき、特色ある研究を推進する」ことを目指しており、日本の食糧供給基地に位置付けられている宮崎県内の大学として、「生命科学」を基盤とし、「自然環境保全」・「食の科学」・「再生可能エネルギー」を加えた4つを重点研究分野とした研究戦略を策定している。
宮崎県は年間の日照時間、快晴日数がともに国内で3位以内と太陽エネルギーに恵まれているため、工学部は、地域の特徴を活かし、地域課題を解決するために推進する研究のひとつとして「太陽光を利用するエネルギー科学の研究」に注力している。宮崎県が進めるソーラーフロンティア構想と連携して、集光型太陽光発電システム、太陽電池の開発に関する研究を実施しており、太陽光発電分野ではめざましい成果をあげている。平成24年度には環境・エネルギー工学研究センターを設立し、総合的な太陽エネルギー利活用研究を強力に推進することとした。未来みやざき創造プラン(平成23年度策定)の環境・新エネルギー先進地づくりプログラムと連携し、産学官共同で大学構内に「ビームダウン式太陽集光装置」を平成24年8月竣工させ、本装置を利用した太陽熱エネルギー利用に関する最先端の研究開発に着手した。
平成26年度から文部科学省特別経費の支援を受けて、太陽熱の高度利用技術の総合的な研究開発である「低炭素社会を目指す宮崎大学太陽エネルギー最大活用プロジェクト」を進めており、地域産業の発展に資するとともに、世界にも目を向けて低炭素社会の実現を目標としている。このプロジェクトでは、最大で20数%のエネルギー利用効率に留まる太陽光発電を超える、太陽エネルギーの有効利用技術の開発と、日照時間内のみ太陽エネルギーの利用が可能である太陽光発電の欠点をカバーし、夜間の電力供給を実現するという二つの課題解決を目指している。
太陽熱エネルギーの高度利用技術の一つとして、高温化学反応を用いたソーラー燃料製造がある。1400℃と1000℃の温度変化を繰り返して金属酸化物の酸化還元反応を進行させ、二段階反応で水を分解してソーラー水素を生産するものである。ビームダウン式太陽集光装置による集光太陽ビームを入射させて、内部の回転ディスクに装填した金属酸化物を水分解反応温度まで昇温する太陽反応器を製作し、1400℃以上の昇温を目指してフィールド実験を実施中である。
ビームダウン式太陽集光装置によって高密度に集光された太陽光線を変換して得られる高温熱を利用して、1800℃以上でシラス(南九州に豊富に存在する火山灰)を還元して太陽電池の原料となる金属シリコン(Si)を製造する研究を進めている。フレネルレンズを用いた太陽集光装置で実証実験を行い、シラスから抽出した高純度シリカ(SiO2)を炭素と混合して太陽反応炉内で高温にすることによって、SiCを生成させることを実証している。
図5 太陽炉を用いたシリカと炭素による金属シリコンの生成
太陽エネルギーを24時間使用するためには電気または熱として貯蔵することが必要となり、蓄熱の実用化に向けては低コスト化が重要な課題である。高価な溶融塩に替わる低コストの蓄熱材料として、高温安定性に優れた溶融スラグを利用することを検討しており、世界最高レベルの集光性能を持つビームダウン式太陽集光装置の特長を活かして、高温蓄熱の実現が期待される。
海外のサンベルト地域では中高温蓄熱と蒸気発生器を組み合わせた蒸気サイクル発電が実用化されており、国内では太陽熱(熱電発電)/太陽光(太陽電池)を組み合わせたハイブリッド発電が実証中であるが、新規性、低コスト化、冷却水不要というメリットを兼ね備えた「圧縮空気エンジンを原動機とした発電システム」の開発を目指している。
太陽エネルギーを24時間使用するための手段として水素エネルギーの形で貯蔵する方法がある。高効率で水素を得ることを目指して、太陽電池として高変換効率の集光型積層太陽電池を用いた水素製造システムの研究を行っている。東京大学の研究グループとの共同研究において、太陽光のエネルギーの24.4%を水素エネルギーに変えることに成功し、世界最高のエネルギー変換効率を記録した。
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