私は学生時代から現在に至るまで、工学部でずっと数学の研究に携わってきています。高校生の頃は、数学は問題が解けたらうれしいけど、なんの役に立つのか?と、あまり興味を持っていませんでした。しかし、工学部の多くの授業をきちんと理解するには、数学が必要だと感じ、4年生の研究室配属では数学の先生に師事し、そこで、数学を研究することの面白さを知りました。
数学の研究の主たる活動にゼミがあります。ゼミでは、専門書や論文の内容を皆の前で説明することが求められます。数学のゼミに臨むには、専門書や論文中の一つ一つの命題、一行一行に含まれる主張について、明確に証明できなければなりません。そのためには、試行錯誤の時間や足りない知識を勉強するなど時間が必要であり、私にとってはその過程がとても楽しく感じました。難解な命題を示すために、ゼミを通して指導教員と議論する時間も楽しいものでした。数学は、取り組む過程に楽しさがあるように思います。
しかし、工学部で数学をやる以上、どうしても「役に立つ」という観点を求められます。では、数学は「役に立つ」のか?答えはYesです。例えば、私の専門分野でもある微分方程式は、物理現象をはじめとして、工学、化学、生物学、経済学、社会学など様々な分野で扱う現象を数式で表現する際に使われます。現象を数式で表すことを「数理モデリング」といい、現象を何かしらの法則にもとづいて数式化する作業を指します。いったん数式で表現されれば、数学を用いた解析も可能です。また、コンピュータを使った予測や制御、シミュレーションも可能となります。特に、シミュレーションは実際の実験設備等を必要としないため、コストを抑えることができ、現在の科学技術の発展に大きく寄与しています。数学は、それらを支えるための重要な学問です。なお、私の所属する静岡大学の数理システム工学科には、数理モデリングやシミュレーション、最適化、そして、そのベースとなる数学や情報科学、プログラミングが学べます。
数学が「役に立つ」といえるもう一つの事柄として、数学に取り組む過程で培われる論理性です。論理性は、理系の人間として社会に出るうえで身に着けておくべきとても重要なことです。仕事や契約など大切な場面において、論理的であることは、誤解を防ぐとともに信用にもつながります。ただし、日常会話で論理の飛躍に敏感すぎると、疎まれることもあるかもしれませんが。
高校生の皆さん、数学の教科書に書いてあることを一つ一つすべて証明できますか?受験を前にして、問題をこなし解法テクニックを習得するという勉強だけでなく、教科書を「きちんと読み考える」ことを大切にしてください。
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