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生レポート!現役学生の声

環状オリゴ糖が示すドキドキ・ワクワクな一瞬に魅せられて

2020年8月28日
山梨大学 工学部
S.Y.

 高校生の頃から化学が好きで工学部応用化学科に入学しました。一言で化学と言っても範囲は広く、3年生までの専門的な授業や学生実験の中で有機化学と分析化学に興味を持ちました。3年生秋に行う卒業論文の研究室配属では、迷うことなくオリゴ糖を扱う有機の研究室を希望しました。

 環状のオリゴ糖はシクロデキストリン(CD)と呼ばれる天然物で、環空洞に色々な有機物を取り込みます。この性質を活かして医薬品や食品、化粧品の安定化剤として広く利用されています。一方で、タンパク質の基質特異性にも似た性質を示すことから、分子認識に関する研究も行われています。先生と相談の結果、「CDを使った分子センサを創ろう!」というのが私の卒論研究のテーマとなりました。

 いざ卒論研究に入ると、3年生までの講義中心の生活から一転して自主的に実験に取り組み結果と向き合う日々。合成や測定実験から得られた結果について考察し、また実験に取り組むことを繰り返す根気の要るものでした。それでも反応物から少しずつ不純物が消えて最終的に綺麗な目的物だけが得られた時、そして難解なスペクトルの謎が解きほぐれ一本の糸のようにスーッと繋がった時は感動と達成感に満たされました。そんな一瞬の感動と感激に魅了されて大学院へと進学し、今では研究室や機器分析センターの装置を利用して、自身の手で創った世界初の分子の構造や性質を明らかにし、機能を解明するドキドキ・ワクワクな毎日を送っています。得られた研究成果を学会で発表する機会にも恵まれ、そこで出会う先生方や他大学の学生さんとの学術交流は有意義な経験となっています。

「工学」というと何か人工的で自然とは無縁の世界に思うかもしれませんが、3年生の最終日の授業で、先生が学生時代に恩師から教わったことを紹介下さいました。それは、「工学」の“工”の字のうち、上の横線“ー”は天然自然の法則や資源である“天”を、下の横線“ー”は人の生活や社会である“地”を表す。そして、天“ー”と地“ー”を結ぶ知恵や知識、技術である縦線“|”をもって“工”という字は成り立つのだと。天然由来で産業界にも利用される環状オリゴ糖は、まさしくこれに必要充分な材料です。自然と人類の英知から創出される新たな分子が私達のより良い暮らしに繋がるよう願いを込めて、「一瞬」の感動を求めて、化学の世界を通して工学の研究に取り組んでいます。

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