スーパーボールをつくろう ~ケイ素高分子の合成~ |
地球表層中に最も多く存在している元素は酸素ですが、2番目に多いのがケイ素です。自然界では、二酸化ケイ素やケイ酸塩などの酸化物として存在しています。人類は古くからケイ素酸化物を利用して、石器、陶磁器、ガラスなどを作り、豊かな生活を獲得してきました。現代では、半導体、光ファイバー、ゴム、樹脂などの原料としても利用され、科学技術の発展に伴い、様々な用途が開発されています。ここでは、通称「水ガラス」と呼ばれるケイ酸ナトリウム(Na2O・nSiO2)の水溶液を用いて、スーパーボールをつくります。
水ガラス(和光純薬製、含量約38%: SiO2 28-30%; Na2O 9-10%)、エタノール、
メスシリンダー(計量スプーンや洗剤容器などの計量キャップでも大丈夫です)、ポスターカラー、プラカップ、
割り箸、キッチンペーパー、保護メガネ、ゴム手袋
メスシリンダーなどを用いてプラカップに水ガラス約20mLを量り取り、ごく少量のポスターカラーを加え、割り箸でよく混ぜます。
エタノール約5mL(※1)を着色した水ガラスに加えて、割り箸でかき混ぜます。はじめは液状ですが、すぐに粘性のない固体になります。
手のひらに固体を取り出し、押し固めるように強く力を加えます。この際、液体がしみ出してくるので、キッチンペーパーなどでふき取ります。
固まりを手のひらで転がし、丸くするとできあがりです。弾ませてみましょう。
ポスターカラーを加えないと白色のスーパーボールができます。水ガラスの量(※2)やポスターカラーの色を変えて、いろいろなスーパーボールを作ってみましょう。
試薬会社からは、ケイ酸ナトリウム(Na2O・nSiO2)の含量や、ケイ素とナトリウムの比率(n)が異なる何種類かの水ガラスを購入することができます。ナトリウムの比率が高い水ガラス(和光純薬製、含量約52-57%: SiO2 34-39%; Na2O 16-19%)を用いて同様の実験を行うと、スライム状の物質ができ、うまく固めることができません。スーパーボールを作るには、n=3ぐらいの組成をもつ水ガラスが良さそうです。
水ガラス中には、分子量が異なる様々なケイ酸イオンが存在していますが、ケイ素原子はいずれも4つの酸素原子と結合しています。その4つの酸素は、水素やケイ素と結合していたり、ナトリウムイオン(Na+)を対イオンとする陰イオンになっていたりします。水ガラスに脱水作用を有するエタノールを加えると、ケイ素上のヒドロキシ基(HO-Si)が、他の分子のヒドロキシ基(HO-Si)と脱水反応を起こして、シロキサン結合(Si-O-Si)を形成します。この反応が繰り返されると、ケイ酸イオンが高分子になり、固体として析出します。ナトリウムの比率が高い水ガラスを用いると、ケイ素上のヒドロキシ基(HO-Si)の数が減り、脱水縮合があまり進まないために、うまく固まらなかったと考えられます。
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