私は入社後ほぼ一貫してエンジンの研究開発に携わってきました。自動車エンジンの新技術研究は期間が長く、5年から10年もの間世間の目に触れることなく続けた後に実用化されるものがほとんどです。現実には実用化に至らず中止となるものの方がはるかに多く、なかなか出口が見えない時などは真綿で首を締められるような苦しさを覚えることもありました。
それでも時々は、自分たちの仮説が実験で証明されたときなど、「この現象を知っているのは今、世界で自分たちだけだ!」という高揚感を仲間と分かち合うことができ、研究開発の醍醐味を感じることができました。さらに開発した技術が量産化までの多くの関門を乗越えて世界で初めて実用化され、権威ある賞などを頂いた時には、研究開発という道を選んで良かったとしみじみ感じることができました。
子供の時「大きくなったら何になる?」とイラスト付きで描かれたいろいろな職業を眺め、「食べ物屋さん!」「サッカー選手!」と思いをはせたことがあると思います。でも成長していざ進路を考えるころになると、ただやりたい気持ちだけでなく「この進路は自分に向いているのだろうか」「能力的についていけるのだろうか」と、「実現可能性」から考えることが多くなると思います。それはそれで自分を客観的に見られるようになったという成熟の証ですが、できるかどうかばかりを考えて簡単に夢をあきらめてしまうのはちょっともったいない気がします。
私が文系か理系か進路を決める時期になった頃、学科の成績分布は完全に文系向きでしたが、技術系の研究をしたいという思いを強く持っていました。ある人からは「理系が好きか嫌いか程度なら、文系に進んだ方がいい」とも忠告されましたが、半ば意地を張って工学部機械工学科に進みました。その結果大学では数学関係でさんざん苦労するはめにはなりましたが…。それでも自分で押し通した以上後には引けず、何とか志した仕事につくことができました。
もちろん気軽に「やりたいことをめざした方が良い」と言うわけにはいきませんが、人生をかけて一番やりたいことは何か、と自分と対話することは進路の選択において大切なことではないかと思います。苦しい時、最後に力になるのはそんな自分の「思い」ではないでしょうか。
掲載大学 学部 |
群馬大学 理工学部 | 群馬大学 理工学部のページへ>> |
私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 | 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。 これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。 |