高校生時代の自分からみた工学 |
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もう40年近く昔のことになりますが、自分が高校生だった頃、大学の理科系に進学することに迷いはありませんでした。理科系の中では、化学や生物学のような暗記が必要な科目よりは、数学や物理学のように暗記は最小限で、頭で考えるだけで答えが出るような分野が適していると考えていましたので、大学では数学か物理の専門に進むつもりでした。
目出たく入学できた大学では、1~2年生は教養課程で、3年生から専門課程に分かれることになっていましたので、専門分野を選択するまでに約1年半の猶予があり、その間に改めて進路について考える時間ができました。受験勉強から開放されて回りをみると、高校で習った理科系の科目以外に、工学系の専門分野が多数あり、こちらの方が面白そうだと思えてきました。また、小学生の時が「鉄腕アトム」の時代だったので、受験勉強の間にすっかり忘れていましたが、以前からロボットの研究をしたかったことを思い出しました。
ロボットの関係でも特に人工頭脳を研究したかったのですが、人工頭脳とは現在あるようなコンピュータの延長ではないと思われました。そこで、いろいろ調べたところ、脳の中にある神経細胞の機能を模擬して自ら考えて学習する人工神経回路の研究があることが分かりましたので、その分野の研究をしている数理工学の専攻に進みました。
大学院修士課程にも進学して、念願通りの研究を行っている間に、このような研究をさらに発展させて、実際の生活に役立てたいという気持ちが強くなってきました。そこで、関連した研究を行っていた国立の研究所に就職し、人間工学や医療福祉工学の研究を長年行ってきました。まだまだ、当初に目指したような、実際の生活に役立つという成果からは遠いのですが、現在の勤務先である福島大学でも、引き続いて、この目標に向かって進んでいるところです。
このような自分の経験を振り返ってみると、大学には工学という非常に面白い分野があるにも関わらず、高校の授業や、特に受験勉強では、数学や物理、化学、生物学などの理学に触れることはあっても、工学が話題になることはほとんどなかったように思われます。現在ではもう少し事情は違うのかも知れませんが、高校生の皆さんには高校時代には目につかないかも知れない工学という大変面白い分野が大学にはあることを知って、進路の選択に役立てて頂ければと思います。
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