比較的簡単な電子回路とセンサーで、身の回りの放射線を測ることができます。今日はそのような計測電子回路を紹介します。
ここで用いるセンサーは、下の写真のようなシリコン半導体で、PINフォトダイオードと呼ばれます。通常のダイオードは、正のキャリア(電流の担い手)を持つP型半導体と、負のキャリアを持つN型半導体を接合します。PINフォトダイオードの場合、P型とN型の間に、キャリアを持たない真性半導体(Intrinsic)を挿入することで、センサーとしての有感領域を増やし、高速かつ低ノイズの半導体センサーとなっています。
組み立てる回路の回路図を下に示します。これは実は、秋月電子さんから販売されている「PINフォトダイオード使用簡易放射線量モニターキット」の回路のうち、アナログ回路だけを取り出したのと同じ回路です。複雑なデジタル回路の仕組みを取り除き、アナログ信号だけを観察するために、この回路を組み立てました。ですので、秋月電子さんのキットを買ってきて、アナログ回路の部品だけをハンダ付けしても、同じ実験ができます。その場合、全部組み上げてからアナログ信号を観察することもできますが、そうすると、信号を妨げるノイズが見られたときに、デジタルから混入しているのか、外部からなのか、アナログ回路特有なのか、分かりにくくなるので、はじめはアナログだけ組み立てることをお勧めします。
この回路では、オペアンプと呼ばれる部品を使います。回路図の右向き三角形の2つの部品がオペアンプです。オペアンプは、日本語で演算増幅器とも呼ばれます。周辺部品の回路構成によって、加算回路、減算回路、微分回路、積分回路、波形増幅、信号発振器、高周波フィルタ、低周波フィルタ…など、かなり多種多様な演算回路を設計することができる、とても便利な半導体部品です。このオペアンプ2個が1つのパッケージに入った、LMC662という部品をここでは用います。
回路について簡単に説明します。左側にある矢印のようなダイオード記号がPINフォトダイオードです。矢印の向きとは逆の電圧をかけることで、センサーの有感領域が発生し、放射線により生じた電荷を読み出すことができます。最初のオペアンプ回路は、この電荷を電圧に変換します。次のオペアンプ回路は、信号を大幅に増幅して、観測しやすい大きさの電圧信号にします。その後のダイオードと抵抗、コンデンサは、信号ピークを捕まえて、長時間保持します。
PINフォトダイオードは文字通り光センサであり、そのままだと可視光に反応してしまいます。そこで、上の写真のように、水道管によく使うシールテープ(ホームセンターにあります)で絶縁した上で、アルミホイルで遮光とノイズ対策をします。アルミホイルは基板のグランドに接続できるよう、写真のようにフォトダイオードの裏側に配線を仕込みます。
上の写真のように、全ての部品をユニバーサル基板の上に組んで、電源電圧5〜15Vを印加しました。今回は大学で保管している実験専用の線源を用いてガンマ線を当てました。皆さんが実験するときは、アトムレンズと呼ばれる古いカメラレンズが、微量の放射線源となるトリウムを含んでおり、手軽に使いやすいです。現在は市販されていませんが、オークションサイト等で入手可能です。鉱石の中にも、微弱な放射線を出すものがあります。安定した動作のためには、回路全体をビニール袋に入れてからアルミホイルで包むか、よりしっかりと作るのであれば、アルミケースに入れた上で、グランドをアースに接続すると良いです。
オシロスコープで、上の図のような波形を観測することができました。この写真だけでは、放射線なのかノイズに反応したのか分かりませんが、まずは電子回路としては動作していると言えるでしょう。あとは、線源があるときと無いときの反応数の差を見ることで、信号の有無を確認することができます。根気のいる実験ですが、ぜひチャレンジしてみて下さい。
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