鋳造とは、高温に熱して溶かした金属を鋳型(作りたい形と同じ形の空洞部を持つ型)に流し込み、冷やして固めることで目的の形をつくる方法です。身近なところでは、鍋、フライパンなどの日用品、水道の蛇口、マンホールの蓋などの建築関連部品、自動車のエンジンなどの産業機械部品など、用途に合わせて方法や材料を変え様々な工業製品の作製に使われています。
図1は鋳造工程の概略図で、a. 鋳型の準備、b. 溶解した原料の鋳込み、c. 冷却、d. 取り外しの4つに分類できます(図1)。
今回は、金属の代わりにパラフィンワックス(キャンドルのロウの原料)を用い、シリコン樹脂製の鋳型を使用してキャンドルを作製するとともに、鋳造を疑似体験する中で基本となる物質の状態の変化を観察します。
2つに割ってあるシリコン型(今回用いる鋳型)を合わせて紙コップ(小)に入れる(図3)。
紙コップ(大)に、シリコン型を入れた紙コップ(小)を入れる(図4)。
割りばしでキャンドルの芯をはさみ、芯がシリコン型の底に着くように長さを合わせて、紙コップと芯をはさんだ割りばしをセットする(図5)。
お湯を張ったフライパンに、パラフィンワックス(ロウ)を入れたプラスチックカップを入れ、温めて溶かす(図6)。
溶かしたパラフィンワックス(ロウ)に、削ったクレヨンを入れて溶かし、色をつける(図7)。
準備した鋳型に、クレヨンを溶かして色をつけた液体状のパラフィンワックス(ロウ)を流し込み、固まるまで待つ(図8)。
固まったパラフィンワックス(ロウ)の温度を確認し、十分冷えて固まっていることを確認したら、紙コップ(小)を破いてシリコン型を取り出す(図9)。
シリコン型から固まったパラフィンワックス(ロウ)を取り外す(図10)。
鋳造では、溶解した状態の原料を冷却して固めることで目的とする形にします。ここで重要となるのは、物質の状態の変化です。基本的に物質は、気体→液体→固体と変化するにつれて体積が小さくなります。今回作製したキャンドルでも、原料のパラフィンワックス(ロウ)が固まる前(液体)と固まった後(固体)を比較すると、固まった後の芯の周りがへこみ体積が小さくなって(収縮)いることがわかります(図11)。パラフィンワックス(ロウ)が固まる時、カップに接触している外側から冷えて先に固まり、その後、芯の周りの表面中央部まで徐々に固まるにつれて、どんどん体積が小さくなるため、中央部がへこんだ形になります。このことから、鋳造で実際に製品を作る際は、目的の大きさを得るために、体積が小さくなる分だけ鋳型を大きく作る必要があります。
※水の場合は例外で、水(液体)から氷(固体)に変化すると体積は大きくなります。
図11 パラフィンワックス(ロウ)の状態の変化の様子
今回紹介した内容は、当技術部が地域の子ども達を対象として行っているものづくり体験型授業「子どもものづくり教室」において、今年度のテーマの1つとして実施したものです。高温で溶解した金属の代わりにパラフィンワックス(ロウ)を用いることによって、子供たちに鋳造を疑似体験し、物質の状態変化を目の前で観察してもらうことができました。なお、パラフィンワックス(ロウ)の加熱の際は事故の無いように十分に注意をして実験をしてください。
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