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おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

光合成を目で見る

2019年11月15日
豊橋技術科学大学
エレクトロニクス先端融合研究所 高山弘太郎

概要紹介

 植物の何がスゴイ?と聞かれてどのように答えますか。光合成が重要なキーワードです。ここでは、光合成を目で見る「クロロフィル蛍光計測による植物診断技術」についてご紹介します。

植物の"スゴイ"を支える光合成

 植物の何がスゴイ?と聞かれてどのように答えますか。

 人間のような動物と比較してみてください。動物は、文字通り「動く物」なので、"動く"ということが大きな特徴です(もちろんほとんど動かない動物もいますが・・)。動物は生きていくために、一生涯食べ物を探して動き回らないといけないのです。これに対して、植物は"動く必要が無い"といえます。①の答え"植物のスゴイところ"は、「植物は動かなくていい!」となります。

 このスゴイところを支えるのが「光合成」です。「光合成」では、葉緑素で光を吸収し、このエネルギーを使って空気中の二酸化炭素から糖(≒植物の"ごはん")を作り出します。だから、植物は動かなくていいのです。

光合成とクロロフィル蛍光

「光合成」の最初のステップである"光の吸収"は、緑色の色素である葉緑素が行います。葉緑素は、専門用語では"クロロフィル"といいます。クロロフィルは、吸収した光エネルギーを光合成に利用しますが、光合成に使い切れずに余ったエネルギーは、赤色の光として捨てられます。つまり、植物葉は、ほんのり赤く光っているのです。この赤色の光を"クロロフィル蛍光"とよび、クロロフィル蛍光を観察することで光合成機能の有無を知ることができます。

実験その1:葉からクロロフィルを抽出してクロロフィル蛍光を観察する

用意するもの

  • ホウレンソウ(緑の葉っぱであれば何でもOK)
  • ハサミ(葉を切断します。無ければ、手でちぎってもOK)
  • エタノール(ドラッグストアで売られている消毒液など、エタノールが主成分の物であればOK)
  • 茶わん
  • コーヒーのフィルター
  • 青色のLED

手順

  1. ハサミ(または手)で葉を細かく切断して、茶わんに入れます。
  2. 1にエタノールを加えて、葉を押しつぶすような感じでゴシゴシします。葉中のクロロフィルが抽出されると、エタノールが緑色になります。
  3. 緑色になったエタノール液を、コーヒーフィルターに通してこします。葉の白い繊維が取り除かれて、緑色の透明で綺麗なクロロフィル抽出液を作ることができます。
  4. 部屋を暗くして、クロロフィル抽出液に青色LEDを照射してください。赤色のクロロフィル蛍光の発光を観察することができます。ただし、照射している青色光の反射光があるために、条件によっては、紫色に見える場合があります。
  5. クロロフィル抽出液などは、ティッシュなどにしみこませて、燃えるゴミとして捨てましょう。

実験2:本物の葉と偽物の葉を見分けよう

  • 本物の葉(アイビーなどが望ましいです)
  • 偽物の葉(本物の葉と同じ外見のものが望ましいです。アイビーなどが入手しやすいです)
  • 青色のLED
  • 赤色フィルタ(富士フイルムSCフィルター SC-66など)
  1. 青色LEDを使って葉に青色光を照射しながら、赤色フィルタ越しにクロロフィル蛍光の発光の有無を目で観察します。
  2. 本物の葉と偽物の葉を見比べて見ましょう。クロロフィル蛍光を発光する方が、光合成機能を有する本物の葉です。
  3. 青色LEDを葉に近づけることで、葉に照射される光の強さを強くできます。赤色フィルタは目に近づけて観察すると、観察しやすくなります。

解説

 クロロフィル蛍光を正確に計測することで、植物体内の光合成反応に関する情報を取得することができます。たとえば、一定の強さの光を植物に照射した場合、光合成の調子が良いと、吸収した光エネルギーの大部分が光合成に利用されますので、クロロフィル蛍光として捨てられるエネルギーは少なくなります(クロロフィル蛍光が弱い)。一方で、光合成の調子が悪い場合には、吸収した光エネルギーが光合成に使われずに大量に余りますので、クロロフィル蛍光が強くなるということになります。この関係を利用することで、クロロフィル蛍光計測による植物生育診断ロボットが開発されています。

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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