みなさんは空に向かって伸びた植物の根を見たことがありますか?多くの植物の根には重力の方向に成長する仕組みがあります。植物から重力センサーの働きをする部分を切り取って根を上に向かって成長させてみましょう。
※基本的には百円ショップで全て手に入ります。
トウモロコシには赤い色の農薬がついていますので、トウモロコシの種を紙コップ内の水でかきまぜて洗います。水は3回換えてください。手袋を付けてください。
水を吸ったトウモロコシの種を、種の先がとがった方を下に向けて、半分に折ったキッチンペーパーの上辺から1cm程のところに等間隔に並べます。キッチンペーパーは水で湿らせておいてください。
種ごとペーパータオルをくるくると海苔巻きのように巻き込み、底から1cm位水を入れた紙コップに立てて、暗い戸棚などに4日間置きます。この間にトウモロコシは発芽します。立てておくことで真っ直ぐな根を得ることが出来ます。
ストローの一端に3カ所、1cm程度の切れ込みを入れておきます。こうすることで、こちら側からトウモロコシの根と種を挿入するために、少し拡げておきます。
切れ込みを入れた反対側の口をホチキスで閉じておきます。こうすることで、ストロー内の水分の蒸発を防ぎ、根の乾燥を防止します。
さて、ここが一番難しい作業です。「根を上に向かって」伸ばし続けるために、根の先端、ちょっとの部分をカミソリで切り落とします。本当にちょっとだけです。先端から1mmも切ると切りすぎです。拡大図をよく見てください。切り落とすのは透明になっている部分です。かろうじて肉眼で見えると思います。
ストローの切れ込みを入れた方から根を慎重に差し込んで種を押し込むと、ストローを逆さにしても落ちません。根の先端を切り落としてないもの、切り落としたものを入れたストローを何本か作って、黒い紙にテープでストローごと貼り付けましょう。
ブックエンドに黒い紙を貼り付けて、根が重力に対して逆さまを向くように設置します。それをバットに置いて、バットに水を張ってください。種が浸る程度で十分です。
明るい場所に設置して1日で結果が見られます。先端を切っていない普通の根は、Uターンして地面の方向に曲がったのに対し、根の先端がないトウモロコシの根は上に向かって伸び続けましたね。なぜでしょうか??
植物の根の先端には、「根冠(こんかん)」と呼ばれる組織があります。この組織は写真の通り、ネバネバした粘液を分泌して根が伸びるときに土との摩擦を避けます。そうすることで、根冠の隣にある根端分裂組織が傷つくのを防いでいます。分裂組織がダメージを受けると、根の生長は止まってしまいます。カミソリで根の先端を切るときに切りすぎると、実験すら出来ないのはこういう意味があります。
それでは今回の実験では、なぜ根冠がないと根が曲がらずに上に伸び続けたのでしょうか?実は、植物の根端には重力を感じるセンサーとしての機能があるからなのです。我々が三半規管で重力の方向を感じ取っているのと同じ原理で、根は重力の方向を理解しています。根の先には、局所的にデンプンの粒が沢山詰まっている細胞があります。この細胞内のデンプン粒が重力の方向に沈降し、細胞の一方に圧力を生じることで、根は重力を感知すると考えられています。そういうわけで、逆さまに置かれたトウモロコシの根は根冠が無いと、自分が置かれている状況を理解出来ない、という理屈です。
実はこの実験は、ストローに逆さまに入れた根を真っ暗闇に置くと異なった結果が得られます。根冠を切っていない根も上へ向かって伸び続けます。なぜなのでしょうか?まだ様々なことが解明されていませんので、このような簡単な植物実験で色んな条件(光や温度など)を試してみると良いと思います。
根の重力感知メカニズムは全て解明されているわけではありません。多くの科学者が現在も挑戦中の研究課題です。このような簡単なセットアップで自宅ででも出来る植物の根の実験結果が、もしかしたら大発見につながるかも知れません!面白い結果が得られたら是非教えてください。
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