我が国は世界有数の地震大国です。地震の少ないオーストラリアの友人に気象庁の地震情報のウェブサイトを見せたところ、その発生頻度に大変驚かれたことがありました。皆さんも興味があれば検索してみて下さい。平成以降でも阪神・淡路大震災、東日本大震災、そして今年元日の令和6年能登半島地震をはじめとして報道でも大きく取り上げられてきました。
過去の震災の教訓を活かして、我が国では世界一と言える地震対策技術を有しています。耐震、免震、制震と大きく3つに分類される、それぞれの技術について大まかに見て参りましょう。
地震の揺れに対し、強度、あるいは粘り強さ(エネルギー吸収力)で対抗するものです。電車の中で、踏ん張って立っている状態をイメージして下さい。実際の建物では頑丈な部分で揺れのエネルギーを吸収するため、破損を伴います。
図の建物を例にすると、
他にも、そもそも柱とはりを一体化させておく(ラーメン構造)技術もあります。
耐震技術は写真のように、校舎の外側から補強した部分など目につく場所にも多く使われていますね。
反対に、西洋風の総レンガ造りは積み上げただけの状態に近く、耐震構造にはなっていません。「三匹の子ぶた」のレンガの家は、オオカミには強くても、地震の前には無力なのです。
耐震構造は分かりやすく、割り箸などを使って簡単に実験することができるので今回は紹介致しません。興味があれば夏休みの宿題の良いテーマとなるでしょう。
揺れる地面と骨組の間に柔らかい層(免震層)を設け、建物の揺れを最小限に抑えるものです。私は幼い頃、「頑張ってジャンプし続けていればどんな地震にも耐えられる!」と考えていました。免震の概念そのものです。
実際の建物では耐震とは異なり、しなやかな部分を敢えて設けます。破損を伴わないことも期待されています。
図の建物の黄色部分に、いわゆる市販の耐震マットのようなプルプルするゲル状のものを下敷きにすることで、建物の揺れを減少させます。「耐震」マットとは言いますが、実際には「免震」であることは、面白いですね。他にも、材料間の滑りを利用したり、挟んだボール状のものの転がりを利用したりする方法もあります。
免震技術は100年以上の歴史がありますが、我が国では阪神・淡路大震災以降急速に普及し、東日本大震災で効果を発揮しました。
免震構造も分かりやすく、耐震マットを使ってお手軽に実験することができるので今回は紹介致しません。興味があれば春休みにやってみるのもいいかも知れません。
地震のエネルギーを効率的に吸収して建物の揺れを抑えるものです。熱エネルギーもしくは運動エネルギーに変換し、打ち消しています。繰り返しの地震を想定しており、大きな建築物が採用しています。
図の建物を例にすると、
揺れを打ち消す際にはその建物の揺れ方(固有周期)を知っておく必要があります。ブランコに乗り、体をひねって揺れを大きく、あるいは小さくしていくことを思い出してください。感覚的にブランコ固有の周期を利用しているのです。制震の実験をしてみましょう。
缶の中心にビー玉が戻ろうとする働きを利用したオリジナル実験です。
~制震とは?~で紹介した3例目「振り子、おもり等で揺れを打ち消す」モデルです。
揺れを抑える構造を持つ建物として五重の塔、東京スカイツリーなどが有名です。また制震の実験は、おもりを紐で吊して構造体に結びつける方法が普通です。興味があれば調べてみて下さい。
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