毛髪に指を滑らせると、ある方向には滑らかにすべるのに対して逆方向には引っかかる感じがしませんか。これは毛髪の表面をちょうど魚の鱗(うろこ)のようにキューティクルが覆っているからです。毛髪をそのまま見ても真っ黒な棒にしか見えませんが、身近なものを使ってレプリカ(複製)標本を作れば、普通の顕微鏡できれいな模様が観察できますよ。
毛髪は3種類の部分でできています。
スライドガラス 液状のり(市販のもの) 毛髪 顕微鏡 スマートフォンや携帯電話のカメラ
※顕微鏡や写真撮影装置は学校の理科の先生にも相談してみましょう。
カバーガラスは使わないので、対物レンズをのりで汚さないように注意しましょう。
スライドガラスに液状のりを垂らします。のりが自然に広がって、スライドガラスの上に直径1.5 cmほどの円ができるようにします。
のりを盛り上げすぎると乾くのに時間がかかるので、楊枝(ようじ)などを使って広げましょう。
表面がでこぼこになっても、少し待てばのりが流れて表面が滑らかになります。
のりの表面に毛髪を並べて置きます。置いたときに毛髪がずれないように、そっと置きましょう。
のりが乾いてしまうと跡がつかなくなります。のりをスライドガラスに載せたあとは、あまり時間をおかずに毛髪をのせましょう。
失敗しても水洗いすればのりは取れるので、何度でもやり直せます。
夏なら1~2日間風通しの良い所へ置いて自然乾燥しましょう。ホコリがつかないように工夫しましょう。
ドライヤーなどを使って乾かすのはお勧めしません。のりが一部分だけ急に乾いて縮み、しわがよったり、毛髪がはがれたりします。あわてず、自然に乾くのを待ちましょう。
のりがよく乾いたら毛髪をはがします。のりに付いた毛髪の跡が崩れないように、まっすぐ上にはがすようにしましょう。
のりが生乾きだと、毛髪をはがしたときにしわになったり、毛髪の跡が壊れてしまいます。のりが固まるまでは触らずにそっとしておきましょう。
毛髪の跡がついたのりの表面を顕微鏡で観察します。対物レンズにのりがつかないように、ピントを合わせるときは気をつけましょう。始めは倍率の低い対物レンズで見て、毛髪でついた筋が視野の中央に来るようにします。顕微鏡の倍率は100倍 〜 200倍でよく見えます。
きれいなキューティクルが見えたら写真に撮ってみましょう。携帯電話やスマートフォンのカメラのレンズを接眼レンズに接着させて、ズームします。画面を見ながら顕微鏡のピントを合わせましょう。携帯電話やスマートフォンのオートフォーカスではピントのあった写真が撮れないことがあります。またレプリカはへこんでいるので、ピントをいろいろな場所に合わせながら、何枚か写真を撮りましょう。
携帯電話のカメラで撮ったキューティクル
キューティクルの間隔を測ってみましょう。
写真を画面に表示します
パソコンが使える人はパソコンに取り込んで表示させましょう。
画面上でキューティクルの間隔を定規で測ります
一つ一つの幅を測っても良いのですが、キューティクル10本分、20本分の長さを測って割り算すれば、一度の計測でキューティクルの間隔の平均値が得られます。
薄めた食酢に毛髪を浸して、時間を追ってキューティクルの幅を測りました。
キューティクルの幅は画面上で測定した長さですから、表示させる画面によって異なります。
また、実験結果はあくまで例です。
別々の毛髪のレプリカを比較するときには、顕微鏡の倍率、写真を撮る時のカメラの倍率、画像を表示するときの倍率、をすべて同じにする必要があります。
顕微鏡の倍率やパソコンの拡大倍率は数字ではっきり決められますが、携帯電話やスマートフォンのズームを一定にするのは難しいので、全くズームしないか、フルズームで撮るか、どちらかにするとよいでしょう。
いろいろな工夫をすることで、別の世界が見えてくるかもしれませんよ。
試料の表面は走査電子顕微鏡や実体顕微鏡で観察することもできますが、大きくて運べないものや、貴重なため壊してスライドガラスの上に載せることができないものの表面を観察するのにはレプリカ法が役に立ちます。このようなときに電子顕微鏡の試料を作るのにも、のりのようなものが「転写剤」として用いられるそうです。
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