2017年10月13日
九州地区
熊本大学工学部 情報電気電子工学科
松田俊郎 准教授
わが国の交通部門の低炭素化目標を達成する為に、バス、トラック分野での環境対応車の早期導入が必要とされている。EV(電気自動車)バス、トラックについては、実証試験や限定的な営業運転が行われてEVバスの有効性は評価されているものの、価格が高いことが原因で普及は進んでいない。また地方公共交通バスに目を向ければ、路線バスは高車齢のものが多く、大気汚染、CO2排出、燃費の面で早急な改善が望まれる。
これらの課題を解決する為、本技術開発では、「乗用車EVで量産される要素技術を活用して大型車用のEVシステムを構築し全国の車両工場で生産可能とする」という新しい発想で低価格のEVバス、トラックを実用化し、バス・トラック分野の低炭素化、排気ゼロ化、低燃費化を図ることを狙いとしている。本技術開発は環境省の「平成28年度CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」として採択されている。(H28〜H30年度)
路線バスとして使える実用性を持ったEVバスを1000万円の付加価格(従来ディーゼルバスとの差額)で実現可能な大型車用EVシステムを実用化し、いろいろな車両製造会社で製造できるように技術を標準化することを技術開発の目標とし、路線バスとしての性能と諸元は、1充電航続距離50km(1日数回の急速充電を行い1日の運行をカバー)、バッテリ電力容量120kWh、駆動モータ出力190kWとしている。
この大容量、高出力のシステムを低価格で実現する為、量産乗用車EVで大量生産されるリチウムイオン電池モジュールを24個搭載した大型車に搭載し易いバッテリパック、このバッテリパックを複数並列に接続する大容量バッテリシステム、量産乗用車EVの駆動モータ2個を減速機で結合する高出力モータシステムなどを新たに開発している。また、本システムの構成部品は既存のバスの床下に搭載可能な構造と形状としている。
H28年度に大型車用EVシステムの設計と試作を行ない良好な結果を得ている。今後、H29年度に実証試験バスを試作して、H29〜H30年度にかけて、熊本市のバス路線で実証試験を行なうと共に、大型車用EVシステムを搭載したEVバス、トラックを全国的に導入して、効用面、運用面での認知度の拡大と多量生産に向けた準備を進めたいと考えている。
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