2024年11月28日
東北地区
岩手大学理工学部システム創成工学科社会基盤・環境コース
環境計測には大きく2つの目的があると考えます。一つは、極微量の有害物質を精度良く計測することで、一つは、生活に身近な環境状況を多くの場所で継続して計測することです。私の研究は主に後者を目的としており、専門性を有していない一般の方々にも環境状況(特に大気環境)を理解してもらい、環境計測や環境問題は人任せ(専門の人だけが考え、実践するもの)と考えず、自分事として捉えてもらうためにはどうすれば良いか考えながら研究しています。以下に、最近の研究2つを紹介いたします。
大規模自然災害が頻発している昨今、被災地域や瓦礫撤去作業現場は劣悪な大気環境下におかれてしまいます。作業や生活をする上で、安全・安心な生活環境を維持するためには、現場で有害物質の飛散の有無を観測し、オンサイトで大気環境情報を共有することは極めて重要です。そこで、現場に設置した簡易モニタリング材表面(粉じんが付着)画像を撮影し、画像解析することで大気中粉じん量や粉じん成分濃度をモニタリングできる手法の開発を進めています。また、ドローンによる自動モニタリングの可能性についても検討しています。図1にモニタリング手法のイメージを示します。
モニタリング材表面の色彩や明度の変化量を『有色ピクセル比』というオリジナルの指標で定義し、モニタリング材に捕集された粉じん量[mg/cm2]との関係を評価したところ一次回帰の関係性を示しました。図2に捕集粉じん量と有色ピクセル比の関係を示します。この結果から、モニタリング材の表面画像を撮影し、『有色ピクセル比』を算出することで、飛散粉じん量を推定することが可能になりました1)。
地球温暖化は世界共通の環境問題です。温室効果ガスであるCO₂排出量を抑制することはもちろんですが、CO₂吸収能を有する森林資源を保全することの重要性が再認識されています。しかし地下資源を採掘する開発現場では、大規模な森林伐採を余儀なくされ、かつ多数の重機やプラント稼働に伴う多量のCO₂を排出しているのが現状です。そこで、開発地域での森林吸収によるCO₂排出量抑制を目的とし、開発地域近傍の衛星画像と地理情報システム(GIS)を用いて開発場内の森林や緑化樹木によるCO₂吸収量の推定と植生分布の見える化を行っています。図3に衛星画像から植生エリアを抽出し、GISで見える化した結果を示します2)。
国立研究開発法人国立環境研究所の日本国温室効果ガスインベントリ報告書2020に記載されている樹木のCストック量算定式3)と千葉県が公表しているCO₂吸収量の算定式4)を参考に、開発場内の植生によるCO₂吸収量[ton/yr]を推定しました。図4に東北地方に位置する採石場内の植生によるCO₂吸収量と若い樹木(樹齢10~40年)が占めるCO₂吸収量の割合を示します。
CO₂吸収量が多い採石場は、若い樹木が占めるCO₂吸収量の割合が高い傾向にありました。この結果から、採掘が終了した残壁への緑化活動は景観的な森林修復の他、CO₂吸収ポテンシャルの回復にも有効であることが示されました5)。
大気環境に限らず、生活に密接な環境問題を意識することは大変重要です。私は、専門機器を使用せず、誰でも大気環境の現状を知ることができる環境計測手法の開発を目指しています。また、IoTやビッグデータ、AIなどを身近な環境分野に取り込んで、一般の方々にも感覚的にわかりやすい環境情報を発信していきたいと思います。
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