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鹿児島の天然資源・金属伝統工芸品を探る

2022年3月4日
鹿児島大学 工学部

 鹿児島は火山性ガラスであるシラスが豊富な土地です。シラスは粘土と異なり固結性に乏しいためシラス台地と呼ばれる丘陵では大雨で崖の崩落が度々起こり災害をもたらしてきました。そんなシラスはマグマと同じ化学組成をもち、約800℃から軟化し始めガラス特有の粘性流動を示します。シラスには数%の水分が含まれているため、細かく砕いた粉末を1000℃近傍で急激に加熱すると、水蒸気の圧力で内部に気泡ができて、風船のように内部に空洞をもつシラスバルーンができます。一方、シラスは石英、長石を含んでおり。天然のセラミック複合材料とも言えます。今日シラスは粉末、粉体として石鹸、研磨剤から土木材の応用にいたるまで幅広く活用されていますが、私達の研究室では焼結という手段を用いてバルクのシラス材料を作ることにチャレンジしてきています。焼結は粉末に圧力を加えて高温で保つことで、粉末間で物質の移動がおこることで達成できますが、私達の最初のチャレンジは、シラスバルーンの空洞構造を保ったままの焼結体ができないか、ということでした。その目的は大変軽くて強度も強いセラミックの断熱材、汚水処理等のためのフィルターを作るというもので、適切な条件で空洞構造を残した焼結体を作ることができました。その後、私達は他のシラス焼結体の作製を手掛けていますが、作製工程が環境に影響を及ぼさないこと、廃棄する際にも天然資源であることを絶対の前提としています。

シラスバルーン
(電子顕微鏡写真)
空洞構造を保持したシラスバルーン焼結体
(電子顕微鏡写真)

 私達は地域資源の有効利用とともに地域の伝統工芸についても調べています。鹿児島には国指定の3つの伝統的工芸品(大島紬、薩摩焼、川辺仏壇)があり、県指定の伝統工芸品が32品目ありますが、薩摩錫器、鹿児島の伝統的包丁について研究してきています。薩摩錫器では鋳造、切削、腐食、コーティングの過程を、包丁では日本刀の伝統を引き継ぐ和包丁における鋼の鍛造、焼入れ・焼き戻し、高温酸化、表面処理、研削という過程を追ってきました。これらの伝統技術は教科書にも載っている金属加工を網羅しています。ですが実際の製品を詳細に観察すると、教科書の説明や写真、図面ではとても理解ができないことにぶつかることがあります。手作りのものは世界でたった一つしかなくそれぞれが違った個性をもっています。それこそが職人がずっと引継ぎ守っていた伝統技術の妙味です。

型への錫溶湯流し込み
(鋳造)
錫鋳造材表面研削・磨き
絵付け・腐食・仕上げ後の完成品
(表面は梨地模様)
鹿児島の伝統的和包丁鹿児島の伝統的和包丁
硬い刃先をもたらす鋼材の焼入れ組織
(電子顕微鏡写真)
鋭い切れ味をもたらす刃先の3次元形状
(レーザー表面形状測定装置解析)

 地域の資源、技術に関わった仕事は、地元の多くの人達、企業と仲良くなれますし、同時に協力なしにはできません。地域の技術だから県内、広くて精々国内に限られるの?と思われるかもしれませんね。でも、シラスは他の素材による製品も加えて海外の大学との共同研究をやってましたし、研究のための短期留学生も受け入れてきました。そのように研究、交流を世界に向けてコミュニケーションの輪を広げていくこともまた探検でしょう。

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