燃料電池は水素と酸素を結合させ、電気を発生させる発電システムです。燃料電池は発電の際、水しか生成されないため、二酸化炭素を排出しないクリーンな大容量電源として期待されています。燃料電池には、固体酸化物形燃料電池や、固体高分子形燃料電池など様々な種類がありますが、その中でも特に固体高分子形燃料電池は起動速度が速く、低温発電が可能である事から、電気自動車の電源や家庭用電源として開発が進んでいます。この燃料電池は長時間使用し続けると、水素と酸素が結合して電気が発生する部分であるMEA(膜電極接合体:Membrane Electrode Assembly) と呼ばれる、高分子電解質と触媒電極を重ねた膜内で劣化が進行し、発電効率が低下する事が問題となっています。そのため発電効率の評価のために、MEA内での発電電流分布をリアルタイムで監視できる技術が求められています。しかしこのMEAは燃料電池内の中央部に位置するため、複数の電流測定用端子を燃料電池内部に挿入・配置して電流分布を測定することは実質的に困難です。
一方、燃料電池は直流電流が発電されるため、発電が開始されると電池の周囲に、発電に見合った微弱な静磁界が発生します。そこで、燃料電池の周囲に非接触で複数個の磁界センサを配置して、電池の周囲に分布する空間磁界を測定します。そして、これらの空間磁界分布を使用し、アンペールの法則に照らし合わせて、燃料電池内部のMEA部で発電する電流分布を逆計算(逆問題解析)で求める手法を検討しています。この手法は、高速で高精度な磁界計測システムや、逆問題解析アルゴリズムの開発が必要となりますが、測定装置は小型であり、また非接触で瞬時測定が行えるため、燃料電池の発電や運転を止める事無く状況把握が行えるメリットがあります。
大分大学では、この新評価技術を複数の研究機関と共同で研究開発を進め、数年以内に実用化を目指しています。
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