トップページ > なんでも探検隊 > 燃料電池内部の電流を非接触で見る

なんでも探検隊

燃料電池内部の電流を非接触で見る

2019年8月2日
大分大学 理工学部

 燃料電池は水素と酸素を結合させ、電気を発生させる発電システムです。燃料電池は発電の際、水しか生成されないため、二酸化炭素を排出しないクリーンな大容量電源として期待されています。燃料電池には、固体酸化物形燃料電池や、固体高分子形燃料電池など様々な種類がありますが、その中でも特に固体高分子形燃料電池は起動速度が速く、低温発電が可能である事から、電気自動車の電源や家庭用電源として開発が進んでいます。この燃料電池は長時間使用し続けると、水素と酸素が結合して電気が発生する部分であるMEA(膜電極接合体:Membrane Electrode Assembly) と呼ばれる、高分子電解質と触媒電極を重ねた膜内で劣化が進行し、発電効率が低下する事が問題となっています。そのため発電効率の評価のために、MEA内での発電電流分布をリアルタイムで監視できる技術が求められています。しかしこのMEAは燃料電池内の中央部に位置するため、複数の電流測定用端子を燃料電池内部に挿入・配置して電流分布を測定することは実質的に困難です。

 一方、燃料電池は直流電流が発電されるため、発電が開始されると電池の周囲に、発電に見合った微弱な静磁界が発生します。そこで、燃料電池の周囲に非接触で複数個の磁界センサを配置して、電池の周囲に分布する空間磁界を測定します。そして、これらの空間磁界分布を使用し、アンペールの法則に照らし合わせて、燃料電池内部のMEA部で発電する電流分布を逆計算(逆問題解析)で求める手法を検討しています。この手法は、高速で高精度な磁界計測システムや、逆問題解析アルゴリズムの開発が必要となりますが、測定装置は小型であり、また非接触で瞬時測定が行えるため、燃料電池の発電や運転を止める事無く状況把握が行えるメリットがあります。

 大分大学では、この新評価技術を複数の研究機関と共同で研究開発を進め、数年以内に実用化を目指しています。

固体高分子形燃料電池の周囲に生じる磁界分布
推定された燃料電池内の発電電流分布
※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

関連記事

2019-08-22

生レポート!現役学生の声

電気電子工学の魅力!

佐賀大学理工学部

2024-07-19

生レポート!卒業生の声

将来に悩んでいた高校時代の自分に出会えたら、どんなことを話すだろう

長岡技術科学大学工学部

2023-01-27

Pict-Labo

グラフェン被覆アルミニウム粉末を用いた高熱伝導焼結合金の開発

宇都宮大学工学部

2023-10-13

生レポート!大学教授の声

自分を将来へ導く「目標」を持って学ぶ

大分大学理工学部

2023-10-20

なんでも探検隊

革新的なダイヤモンド加工技術の開発

金沢大学理工学域

2023-10-13

おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

土壌微生物電池でLEDを点灯させよう!!

長崎大学工学部

大分大学
理工学部

  • 創生工学科 機械コース
  • 創生工学科 電気電子コース
  • 創生工学科 福祉メカトロニクスコース
  • 創生工学科 建築学コース
  • 共創理工学科 数理科学コース
  • 共創理工学科 知能情報システムコース
  • 共創理工学科 自然科学コース
  • 共創理工学科 応用化学コース

学校記事一覧

なんでも探検隊
バックナンバー

このサイトは、国立大学56工学系学部長会議が運営しています。
(>>会員用ページ)
私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。
これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。