磁気浮上とは、電磁石や永久磁石による磁気力を使って、どこにも接触することなく物体を浮上させることを意味します。特に、回転体を磁気力により非接触で支持する機械要素を磁気軸受と言います。一般的な転がり軸受と比較すると、摺動部・機械的摩擦が無いのが最大の特長です。このため、軸受潤滑等のメンテナンスが不要、高寿命、粉塵が発生しない、高速回転が可能などの利点があります。この磁気軸受は、回転主軸を非接触で支える機械要素ですが、主軸を回転させるには、別途モータ機構をシステムに組み込む必要があります。一方、ベアリングレスモータは、磁気軸受と回転の機能を1ユニットに統合して両方兼ね備えたモータであり、学術的に磁気軸受とは区別されています。磁気的に一体化しているかどうかが、磁気軸受との大きな違いです。ベアリングレスモータは、1ユニットで磁気浮上回転が可能なため、磁気軸受と比較するとコンパクトな構造になります。近年、半導体製造分野での純水・薬液搬送用ポンプや補助人工心臓に応用され、脚光を浴びています。
静岡大学工学部機械工学科の朝間研究室では、このベアリングレスモータの基礎・応用研究を行っています。図1は、開発した小形ベアリングレスポンプです。モータ構造と磁石の配置を工夫することで、既存ポンプと比較してセンサ数を半分にし、磁気浮上制御の回路も簡便化を図り、さらに羽根車を支える力を2倍以上に増大させることで回転動作の安定性を大幅に向上しました。
図2は、永久磁石モータ(奥)と鉄球磁気浮上装置(手前)です。従来、モータ駆動にインバータが1台、さらに鉄球磁気浮上にインバータが1台必要でしたが、当研究室ではインバータ1台で、すなわち、より少ないパワースイッチング素子数でモータ駆動と鉄球磁気浮上を同時に実現することに成功しました。この技術をベアリングレスモータ駆動に応用することでシステム全体の小形化・省エネ化を図ります。
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