トップページ > 環境への取り組み > 地下水などの再生可能エネルギーを活用した温調システムの開発

環境への取り組み

地下水などの再生可能エネルギーを活用した
温調システムの開発

東海地区

2021年3月26日
東海地区

山梨大学 工学部 機械工学科
准教授 鳥山 孝司

はじめに

 現在、トマトや胡瓜などといった農作物が年間を通して出荷されています。これらは化石燃料や電力を用いて加熱・冷却することで、農業ハウス内の温度を育成に適した温度に保ち、栽培されています。この温度調節にかかるランニングコストは全体のコストの30%を下らないとも言われています。また、化石燃料を用いていることから二酸化炭素も大量に排出されています。そこで、本研究室では、地下水などの再生可能エネルギーを活用した、農業用の温調システムを開発しています。なお、地下水の水温は年間を通してその土地の平均気温程度であるため、冬場は加熱に、夏場は冷却に利用できます。

 本稿では、公益財団法人JKA(競輪の補助事業:2020M-200)の支援により2020年度に山梨大学工学部内に設置された、実証実験施設について紹介します。

実証実験施設の概要

 図1は実証実験施設の概要図になります。農業用ハウス内に農作物を育成するための温調空間を設置するといった構造となっています。温調空間の側壁は断熱性能の高いビニルシートで挟まれた壁を設置することで、温調空間内の温度を保ち、かつ、外側からの太陽光を取り込めるようにしています。また、天井には、ポリエチレンチューブを敷き詰めており、通水することで熱交換を行うといった構造になっています。図2がその天井の写真で、金属製の金網の上にポリエチレンチューブが置かれています。冬場は暖かい空気が外に逃げないように、ポリエチレンチューブの上側からビニルシートで被うことになります。夏場は、天井からも自然対流で熱が逃げるように、そのビニルシートは外すといった季節に応じて使い分ける形になります。

 温調を行う地下水は、農業用ハウスの外側にて汲み上げており、農業用ハウス内に引き込まれています。天井側のポリエチレンチューブ内を通過したのち、温調空間内に設置された貯水タンク内に貯められます。貯まった地下水は、貯水タンク内のポンプを用いて再循環できるようになっており、外部からの地下水との切り替えは電磁流量弁を用いて機械的に切り替えることができます。なお、貯水タンク内の余剰の水はポンプで排出するといった仕組みも備えています。

図1 実証実験施設の概要図図1 実証実験施設の概要図
図2 温調空間の天井側の様子図2 温調空間の天井側の様子

冬期における加熱温調試験

 図3は、2021年1月28日の18:00から1月31日の18:00の3日間で実施した貯水タンク内の水(225L)を循環したのみでの温調試験結果となります。なお、温調空間の大きさは、幅2.5m×奥行3.9m×高さ2.0mで、通水量は8.5L/minになります。外気温は、明け方直前が最も低く、最終日には-2℃程度にまで低下するといった条件です。貯水タンクの水の温度は、日中はポリエチレンチューブ内を通過する際に太陽光で暖められるため、およそ20℃まで加熱されています。なお、温調空間内も同様に暖められるため、ほぼ同じ温度となります。夕方になるにつれて太陽光による加熱量は減少するため、温調空間内温度及び貯水タンク内の水の温度は低下しますが、完全に暗くなった18:00の段階でも、温調空間内の温度は10℃を保っています。夜間はさらに温調空間内温度は低下していきますが、日中に暖められた貯水タンク内の水温の効果もあり、その温度の低下は5℃程度にまで抑えられています。なお、21:00前後には、貯水タンク内の水の温度は地下水温度を下回るため、その間地下水の通水に切り替えるとか、貯水タンクの容量を増やすことで、この温度低下をさらに減らすことが可能と考えられます。また、温調空間内の地中温度(深さ15cmの位置の温度)に関しては、約11℃~14℃と比較的温度が一定に保たれているため、春や秋物の農作物を育成するには十分な温度を本温調システムの貯水タンク利用のみで実現されています。

図2 温調空間の天井側の様子図3 貯蔵タンクの水のみを利用した際の加熱温調試験結果(2021年1月28日の18:00から1月31日の18:00まで)図3 貯蔵タンクの水のみを利用した際の加熱温調試験結果
(2021年1月28日の18:00から1月31日の18:00まで)

おわりに

 山梨大学工学部内に設置された実証実験施設の加熱温調試験について紹介しましたが、様々な農作物の育成に対応するためには、より高い温度に保つ仕組みの構築に取り組む必要があります。そのため、今後は貯水タンク容量の変更や、太陽熱集熱器を利用した温水の利用などを取り組むことを予定しています。また、夏場における冷却温調試験や実際の農作物の育成への影響の評価についても今後の課題になります。まだ始まったばかりの研究ですが、ランニングコストが非常に小さく、二酸化炭素も排出しないといった特徴があるため、本稿を読んで、本システムに興味を持つ方が現れてくれることを期待しています。

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

関連記事

2021-03-19

おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

シュリーレン撮影法

福井大学工学部

2016-01-21

環境への取り組み

低炭素社会を目指す太陽エネルギー最大活用プロジェクト

宮崎大学工学部

2018-09-14

環境への取り組み

持続可能な未来のためにエネルギーを考える ―政策指向の文理融合研究―

横浜国立大学理工学部

2015-12-24

環境への取り組み

環境的に持続可能な都市交通システムの実現を目指して

愛媛大学工学部

2015-10-29

なんでも探検隊

海洋エネルギーへの挑戦

長崎大学工学部

2021-03-19

環境への取り組み

再生可能エネルギー分野への気象・気候情報の応用

弘前大学理工学部

山梨大学
工学部

  • 機械工学科
  • 電気電子工学科
  • コンピュータ理工学科
  • 情報メカトロニクス工学科
  • 土木環境工学科
  • 応用化学科
  • 先端材料理工学科

学校記事一覧

環境への取り組み
バックナンバー

このサイトは、国立大学56工学系学部長会議が運営しています。
(>>会員用ページ)
私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。
これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。