世界遺産に科学の目を~地域と世界の文化遺産を守る~ |
紀元前5世紀に建てられたギリシャ・パルテノン神殿、7世紀に建てられた法隆寺五重塔は、ともに、地震国にあり、幾多の強い地震にも 耐えてきました。法隆寺の建築技術は、大陸から仏教の伝来とともに伝わったとされていますが、その起源は、遠く、ギリシャ・ヘレニズム文明までさかのぼることができます。そして、ふくらみのあるエンタシス柱などの形態だけではなく、耐震工学的にみると、共通する特徴をもつことがわかってきました。
日本の古代の五重塔は木造で、ギリシャの古代の神殿建築は石造ですが、ともに、太い部材を単純に積み重ねた工法で、継ぐ面にはダボを使っています。柱が太いので倒れようとしても、自分の重さでまた戻ろうとする力が働きます。そして、五重塔は柔構造として知られていますが、実は、硬そうに見えるパルテノン神殿も耐震的にみれば、柔構造の特徴を持っています。
左:パルテノン神殿(ギリシャ) / 右:パルテノン神殿に設置した地震計
上:パルテノン神殿
(ギリシャ)
下:パルテノン神殿に
設置した地震計
歴史的に強い地震にも耐えてきた日本や世界の古代建築はそれぞれ固有の優れた耐震性を有しています。もちろん、創建当時のままではなく、先人達による修理の歴史がなければ、それらの建物は残っていなかったでしょう。これからは、よい建物を建てて、それを長く使う時代です。また、三重県とその周辺地域には多くの歴史遺産があり、それらを災害から守ることも重要です。古代建築の技術、さらに、維持・修理の歴史、それを科学の目を通してみる。その知恵や技術をこれからの建物に役立てる。そんな研究活動を続けています。
アテネ工科大学とアクリポリス修復事務所との共同研究として、日本とギリシャの古代建築技術の耐震研究を進めています。右の写真は、2008年9月にパルテノン神殿に設置した地震計です。日本国内でも、重要文化財五重塔の地震観測を進めています。地震国であり、長い歴史をもつ日本とギリシャ両国の文化遺産を通じた学術交流に寄与することが期待されています。
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