トップページ > なんでも探検隊 > 温故知新!人類初の人工高分子「フェノール樹脂」から「リング状分子」まで

なんでも探検隊

 

温故知新!人類初の人工高分子「フェノール樹脂」から「リング状分子」まで

 
2014年3月18日
金沢大学 理工研究域
物質化学系高分子化学研究室

図1

1907年、アメリカ人化学者ベークランドは、フェノールとホルムアルデヒドを反応させたところ(上図)、水あめのようになり、熱すると固まることを発見しました。その構造は、フェノールが無数につながった構造をしていました。これが人類が初めて人工的に作り出した高分子"フェノール樹脂"です。フェノール樹脂は電気絶縁性、寸法安定性、耐熱性に優れていることから、電子機器の基板や、自動車部品、調理器具(取っ手の部分)など、工業から生活に密着した身近なところまで、幅広く利用されています。しかしフェノール樹脂は、フェノールに対してホルムアルデヒドが3点で反応してしまうため、構造が不明確な三次元網目状の高分子となり、ゲルになってしまいます。

柱状のリング分子

私たちの研究室では、このゲルになってしまう問題点を解決するために、反応点を制御することにより、構造が明確で、優れた特性を示すフェノール樹脂の開発に成功しています。さらに反応点を制御していくと高分子ではなく、輪投げの輪のようなリング状分子が得られてきます。最近私たちの研究室では、柱状のリング分子(右図)の合成に成功しています。この分子は上下対称であり、非常に美しい柱状の形状であることから、パルテノン神殿の柱(ピラー)を取って、ピラーアレーン(アレーンはベンゼン環の意味)と名付けました。ピラーアレーンの輪投げ状の輪の中には、その輪のサイズに合った分子を選択的に取り込む機能があります。その分子を取り込む性質を利用して、工業から医薬分野まで幅広い応用展開が期待されています。100年以上前にできた人類初の人工高分子「フェノール樹脂」は、一見すると"古い"化学であると思われがちですが、反応点を制御するといった単純なアイデアで、"これまでになかった"新しい分子・高分子を生み出すことができます。まさに「故(ふる)きを温(たず)ねて新(あたら)しきを知(し)る」、温故知新の化学であるといえるでしょう。

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

関連記事

2017-04-07

おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

仕事をする風船!?

福井大学工学部

2018-09-14

Pict-Labo

未来材料としての高分子

三重大学工学部

2019-02-15

生レポート!大学教授の声

自分の目で見て、自分で考える力をつける

神戸大学工学部

2013-02-06

なんでも探検隊

プラスチックが電気を通す!~ノーベル化学賞 白川英樹先生が発見した共役高分子の魅力~

山口大学工学部

2021-09-10

輝く工学女子!(Tech ☆ Style)

分子のきもちのほんとのひみつ

弘前大学理工学部

2023-01-13

環境への取り組み

木質系バイオマス由来物質の高分子材料への変換

群馬大学理工学部

金沢大学
理工学域

  • 数物科学類
  • 物質化学類
  • 機械工学類
  • フロンティア工学類
  • 電子情報通信学類
  • 地球社会基盤学類
  • 生命理工学類

学校記事一覧

なんでも探検隊
バックナンバー

このサイトは、国立大学55工学系学部長会議が運営しています。
(>>会員用ページ)
私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。
これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。