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世界遺産の構造物を健康診断する技術の開発

2021年12月10日
筑波技術大学 産業技術学部

 都市にはたくさんのビルや高速道路があって、人々が暮らし、仕事をするために役立っていますね。こうした構造物は人と同じように年齢を重ねて、年老いていきます。どうやって壊れないようにしていくか、時々、ニュースでも話題になります。国内・国外にある世界遺産の構造物も老朽化が進み、それぞれの事情に合わせた対応を考えなければいけません。そこで、筑波技術大学・産業技術学部の研究グループは、世界遺産の構造物の健康診断をするために、計測や分析の研究を行っています。

 長崎市の軍艦島(端島)は、かつて海底炭鉱によって栄え、最盛期には東京の9倍以上の超過密都市でした。エネルギーの主役が石炭から石油に代わると無人島となり、そのままたくさんの鉄筋コンクリート造の建物が残されました。台風が通り過ぎるたびに、少しずつ建物が劣化していきますので、こうした建物群に気象センサや振動を測るセンサをおいて、オンラインで健康診断を行っています。世界文化遺産の保存のためにも、観光資源としての軍艦に似た外観を維持するためにも、健康診断をきめ細かく行い、状態を把握する必要があります。軍艦島の建物群は震災で被災した未来都市と見立てることもでき、ここで必要とされる計測と分析の技術は、次世代防災システムとしても応用できるものです。

軍艦島全景 軍艦島全景 
3号棟に設置している気象センサ3号棟に設置している気象センサ

 アンコールワットは、カンボジア王朝の象徴として建てられたヒンドゥー教最大の寺院で、後年、仏教寺院に改修された東南アジア最大の世界文化遺産です。そびえ立つシンメトリーな祠堂、壁画の精密なレリーフ画、美しい彫刻を特徴としたクメール建築の傑作と言われています。年間を通して観光客で賑わう観光地であり、経年劣化に加え、観光客の歩行などによる影響も大きく、高感度な振動センサで計測を行いました。定期的な計測によるデータ取得と蓄積が望ましいですが、こうした環境では,大型のエネルギー供給システムを持ち込むことも、計測のための配線を行うことも現実的ではありません。そのため、バッテリで動くことができて、多くのセンサで同時に計測しても時刻同期が取れるようなセンサの開発を進めています。世界遺産の構造物だけでなく、一般的な建築物、社会インフラ等の維持管理のためのモニタリングにも有用です。

アンコールワット全景 アンコールワット全景 
アンコールワットの計測に用いた振動センサアンコールワットの計測に用いた振動センサ
チップスケール原子時計を搭載したセンサ チップスケール原子時計を搭載したセンサ 
 センサの性能確認実験 センサの性能確認実験

謝辞:軍艦島内での機器設置と計測には長崎市の協力を得ています。写真は長崎市の特別な許可を得て撮影したものです。

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