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環境への取り組み

海洋プラスチック動態のモデリング
−海岸過程(漂着−再漂流)モデルの開発−

四国地区

2020年9月25日
四国地区

愛媛大学 工学部

 河川などを通じて陸域から海洋に流入した、あるいは海域における人間活動で発生したプラスチックはどのような運命をたどるのでしょうか?海洋環境中に流入した多くのプラスチックは、まずは海岸への漂着と沖合への再漂流を繰り返しながら海洋表層を漂っています(図1)。プラスチックの中で最も生産量の多いポリエチレンやポリプロピレン、あるいは梱包や漁業で多く利用されている発泡スチロールは海水よりも軽いのです。もちろん漂流する範囲に国境は関係ありません。

 プラスチックは紫外線や熱で性状が劣化し、やがては海洋生物が体内に取り込めるサイズにまで微細化します。マイクロプラスチックやナノプラスチックです。厄介なのは、その製造過程で生態系に影響を与える化学物質が添加されていたり、漂流中に海洋環境中の有害化学物質を表面に吸着することです。また、微細プラスチック自身の影響(個体としての影響)についても考えなくてはなりません。

 海洋環境中における微細化のホットスポット、それは海岸です。海岸上での滞留時間は、プラスチックごみの大きさや、プラスチックの種類に依存します。簡単に言うと、大きい、あるいは比重の小さいプラスチックごみ(蓋つきのペットボトルなど)は海岸に長く滞留します。反対に、劣化して微細化したプラスチック(マイクロプラスチックなど)は速やかに海に戻ります。世界中の海岸にどのような大きさのプラスチックごみがどれだけ漂着し、どれだけの時間海岸に滞留して、どのくらい性状が劣化し、その結果、どのようなサイズになって海に戻っていくのか、これを明らかにすることが海洋プラスチックの影響を予測する上で非常に重要です。そこで、我々は様々な大きさのプラスチック漂着物の海岸過程のモデリングをしています。

 海岸過程は波、離岸流、吹送流、潮流、海上風あるいは海岸地形に影響を受けますし、プラスチックごみの大きさや比重によっても変わります。そんな複雑な過程、一つの海岸で計算するのも大変なのに国内全域、太平洋沿岸各国、あるいは世界中の海岸で計算しなくてはならないとなると、一体どの様にモデル化したら良いのでしょうか。我々は、物理プロセスを単純化したモデルを開発しています(Hinata et al.、 Marine Pollution Bulletin、 2020a、 2020b)。漂着と再漂流過程を、それぞれ、漂着確率・再漂流確率、あるいは漂着拡散係数・再漂流拡散係数を使って表現しています。再漂流確率(再漂流拡散係数)は海岸滞留時間から見積もることができる(頑張れば観測できる)のですが、問題は漂着確率(漂着拡散係数)の評価です。そこで、単位時間に漂着するプラスチック量と再漂流するプラスチック量がバランスしている、という仮定を使って漂着確率(漂着拡散係数)を見積もることにしました。大胆な仮定であるにも関わらず、このモデルで色々なサイズのプラスチックの海岸過程がうまく計算できることがわかってきました。現在、このモデルを使った瀬戸内海や日本海での計算を始めています(図2)。

図1(左)離島の海岸に帯状に漂着した大量のプラスチックごみ。(右)海岸に漂着した青色フロート(グラフ中の写真)の数の変化から滞留時間(約7ヶ月)を推定(Kataoka et al.、Marine Pollution Bulletin、 2013)図1(左)離島の海岸に帯状に漂着した大量のプラスチックごみ。
(右)海岸に漂着した青色フロート(グラフ中の写真)の数の変化から滞留時間(約7ヶ月)を推定
(Kataoka et al.、Marine Pollution Bulletin、 2013)
(a)広島湾・安芸灘の表面のマイクロプラスチックの分布。粒子の色は積算漂着日数を示す(佐川,修士論文,2019)。(b)対馬海峡から日本海に流入したマイクロプラスチックの分布(大野,修士論文,2019)。海面に比べて高濃度にマイクロプラスチックが海岸に蓄積。(a)広島湾・安芸灘の表面のマイクロプラスチックの分布。
粒子の色は積算漂着日数を示す(佐川、修士論文、2019)。
(b)対馬海峡から日本海に流入したマイクロプラスチックの分布(大野、修士論文、2019)。
海面に比べて高濃度にマイクロプラスチックが海岸に蓄積。
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