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おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

野菜からゲノムDNAを抽出してみよう!

2026年2月13日
愛媛大学工学部工学科 化学・生命科学コース
特任講師 山上龍太

1.はじめに

 ヒトの体は、約40〜60兆個の細胞からできています。遺伝子は、それらの細胞を作っているタンパク質の設計図として機能します。ヒトをヒトたらしめる、あるいは、自分を自分たらしめる理由は、遺伝子のほんのわずかな違いに由来しています。遺伝子の情報は、細胞の中にあるゲノムDNAという生体分子に書き込まれています。ヒトを含む全ての生き物は、ゲノムDNAから必要な情報をRNAにコピーし、タンパク質へと変換したり、ゲノムDNA自身を複製したり、その制御を行なっています。ゲノムDNAは、全ての細胞が持っていますが、私たちの日常生活では、ゲノムDNAを肉眼で見る機会は、ありません。

 そこで、今回の実験では、野菜からゲノムDNAを抽出し、実際にDNAの存在を見てみましょう!

 今回は、ブロッコリーを用いて実験を行いますが、原理上、他の野菜でも同様に実験可能です。ただし、細胞の破砕しやすさ、夾雑物の多さ、ゲノムDNAの長さ・多さによって、ゲノムDNAの抽出効率は、野菜ごとに変わります。細胞の破砕方法などを工夫して、色々と試してみてください!

2.必要なもの

  • ブロッコリー(あらかじめ冷凍しておく)
  • ハサミ
  • 乳鉢と乳棒(ゴマすり鉢で代用可能)
  • 無水エタノール(ドラッグストアで購入可能)
  • 食塩
  • 中性洗剤
  • ろ紙(コーヒーフィルターで代用可能)
  • かき混ぜ棒(割り箸や爪楊枝)
  • 容器
  • はかり
  • 氷(なくても問題ない)

3.注意

 はさみを使用します。指を切ったり、家のものを傷つけないように気をつけてください。エタノールを使用します。火事に気をつけてください。必ず先生や保護者と実験をしましょう。

4.実験方法

  1. 写真1写真1

    冷凍ブロッコリー、乳鉢、塩化ナトリウム、中性洗剤、ろ紙(コーヒーフィルター)、容器、はさみを用意します(写真1)。
  2. 塩化ナトリウム4gに対して、50mLの水を加えます(溶液A)。
  3. 溶液1に数滴の中性洗剤を加えます(溶液B)。
  4. ブロッコリーの蕾を乳鉢に入れ、氷上で手早くすりつぶします。
  5. 写真2
    乳鉢に溶液Bを10mL加え、静かにかき混ぜます(細胞抽出液)(写真2)。
  6. 写真3
    ろ紙もしくはコーヒーフィルターで細胞抽出液をろ過します(写真3)。ろ液は、容器で受けてください。ろ過に時間がかかる場合は、手で軽く絞っても問題ありません。
  7. 写真4
    ろ過した細胞抽出液を容器に移します(写真4)。
  8. 写真5
    ろ過した細胞抽出液と等量のエタノールを静かに注ぎます。エタノール層と水層ができることを確認します(写真5)。
  9. 写真6
    エタノール層と水層の界面を割り箸でそっと混ぜます。白いゲノムDNAが界面に現れるので(写真6)、割り箸(爪楊枝)で巻きとってみましょう。

5.DNA抽出の原理

図7

 DNAは、塩基・糖・リン酸から構成されるヌクレオチドがつながった生体高分子です。今回は、エタノール沈殿という操作を行って、DNAを抽出しています。DNAのリン酸部分は、細胞のpH条件下(すなわち、中性領域)では、負電荷を保持しています(図7左)。したがって、細胞の中では、負電荷同士が反発し合うため、DNAの分子が無秩序に凝集することはありません。

 そこで、塩化ナトリウムや酢酸ナトリウムのような塩を加えます。そうすると、ナトリウムイオンが持つ正電荷とリン酸部分の負電荷が静電的に相互作用し、DNAの負電荷を中和します(図7中)。この状態のDNAにエタノールを加えて、DNAの溶解度を落としてあげると、DNAの分子同士が凝集し、沈殿します(図7右)。この操作を「エタノール沈殿」といいます。エタノール沈殿は、生物系の研究分野で日常的に使う実験操作です。今回の実験では、水層とエタノール層の界面に、凝集したDNAを確認できます。

  • ※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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