2018年9月14日
関東地区
横浜国立大学 理工学部
横浜国立大学では、エネルギー・環境問題の解決に向けて幅広い教育・研究を実施しています。新しい技術の開発を目指すハード研究はもちろん重要ですが、社会として、どの技術を選択し、どのように利用するかという政策指向のソフト研究も必要です。今回は、後者の研究を文理融合で進めている環境・エネルギーシステム分析研究室の取り組みを紹介します。
電気やガスなどのエネルギーは人々が生活するために不可欠なものであり、安価であると同時に安定的な供給が求められます。また、その利用は自然環境や社会経済に多大な影響を与える可能性を持ちます。それ故に、エネルギー技術の開発や導入は市場原理のみにまかせるのではなく、適切な政策によって最適な方向へ導くことが求められます。例えば、現在、太陽光や風力などの再生可能エネルギーが期待され、その普及に関わる様々な政策や制度が考えられています。
将来に向けて再生可能エネルギー技術に関する適切な政策や制度を策定するためには、その導入が自然環境や社会経済に与える影響を知る必要があります。当研究室では、経済学と工学をベースに、「再生可能エネルギー部門拡張産業連関表(再エネI/O表)」と呼ばれるツールを作成し、それを利用した様々な分析を進めています。このツールを使うことで、再生可能エネルギーを用いた様々な発電技術や熱供給技術の導入が、自然環境や社会経済にどのような影響を与えるかを明らかにすることが出来ます。例えば、再生可能エネルギー技術の利用により、地球温暖化の主因と言われるCO2排出量をどのくらい削減することが出来るのか、地域の雇用をどのくらい生み出すことが出来るのか、などの問いに回答を与えてくれます。
http://www.hondo.ynu.ac.jp/renewables/index.html
エネルギーのことは政府だけに任せておけば良いわけではありません。例えば省エネルギーなどは個々人の意識や行動も重要となります。当研究室では、心理学をベースとして、人々の省エネルギー行動やエネルギー政策の受容性に影響を及ぼす要因やメカニズムを明らかにするとともに、それらの効果的な促進方法について探索しています。いわゆる指導的な教育もひとつの方法かもしれません。他方で、より主体的で自然な方法もあるかもしれません。本研究室では、太陽光発電システムという技術の身近な存在が、その技術と人々の間に感情的なつながり(心理的近接性)を生み出し、それが主体的な省エネルギー行動などを向上させる可能性を示してきました。
エネルギー問題の解決には、理工学のみならず、経済学や心理学などの人文社会科学との融合が不可欠です。当研究室では、持続可能な未来に向けて、現象を理解する「認識科学」と、あるべき価値観を創造する「設計科学」という両者の視点から、日々研究に励んでいます。
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