近年、漁業資源の管理や海洋インフラの点検、海中の生態系調査など、海の中の「見える化」がますます求められています。しかし、海中の映像を撮影するには、ダイバーによる撮影や、有人・無人の潜水装置を使う必要があり、手間や費用がかかるのが現実です。特に、長期間・広範囲にわたる観測には多大なコストがかかるため、導入が難しいケースも少なくありません。そこで私の研究室では、「より低コストで、効率よく水中の映像を取得する方法」を追求し、以下2つの技術を開発しています。
1つ目は、図1に示すような「観測用ブイ」を活用した方法です。このブイは、塩ビパイプで作った三角形の構造を浮体として利用しており、作りやすく、転覆しにくい設計となっています。ブイには、水中カメラを吊るして設置しており、上部にはソーラーパネルと映像データを無線で転送する装置が搭載されています。太陽光で発電した電力は、水中カメラの動作や映像信号の送信に使用され、現場にいなくてもスマートフォンなどでリアルタイムに映像を確認できます。現在、神奈川県の平塚新港に設置されており、このブイに漁港内に生育しているトベラを懸垂し浮き魚礁とし、漁礁の周囲にどのような魚が集まるか、魚の行動パターンなどを長期的に観測しています。省エネ・省人力で安定した水中映像が取得できる点が大きな特長です。
2つ目は、「ポータブル無人船」を使った水中映像取得システムです(図2)。この船は長さ1.5mの双胴式(2本のホースを船体に活用)で構成されており、構造が非常にシンプルで、スーツケースに収まるほどコンパクトに折りたたむことができます。現場への運搬や準備が非常にスムーズです。操作モードは2つあり、自律航行と手動操作のいずれも可能です。観測時には、船底から水中カメラを吊るし、船をゆっくりと曳航させながら撮影を行います。波のある状況でも映像がブレにくいように、船体の設計やカメラの取り付け方法にも工夫を重ねています。
このように、固定観測・移動観測の両面から、従来に比べて安価で実用的な水中映像の取得手法を実現しています。この2つの技術は、水産業だけでなく、防災・港湾インフラの点検、環境モニタリング、さらには教育や観光分野での応用も期待されています。映像データの蓄積によって、AIによる魚種識別や環境変化の自動分析など、さらなる技術展開にもつながっていくでしょう。「見えなかった海の中を、より簡単に見えるようにする」ことに貢献していきたいと思います。
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