地域の難題に住民とともに挑む~日本一汚いといわれた湖の水質改善に取り組む~ |
2003年当時、静岡大学工学部のある浜松キャンパスから約2キロの場所にある「佐鳴湖(さなるこ)」は、環境省がモニタリングしている湖沼のうち全国で最もCOD-Mn値が高い(つまりワースト1の)湖でした。佐鳴湖は工学部の駅伝大会や漕艇(そうてい)などで長年静大生にとって親しみのある場所で、多くの市民もその汚濁に心を痛めていたことから、水質を改善するために工学部の教員学生がともに活動しようと静岡大学アメニティ佐鳴湖プロジェクトを結成しました。
佐鳴湖は浜松市西区と中区の間にある南北2キロ東西0.6キロ、深さ2メートル程度の大きさの湖で、浜名湖に水路でつながって汽水湖であるため50種をこえる魚類が生息します。上流からの水量が少ないため、川よりも海の影響が大きく、海の干満の影響で水位が30〜40センチ上下します。水が刻一刻と動くため、水質調査も定点定期観測ではとらえきれず、24時間連続調査も試みました。現在では、下水道整備が進み浚渫(しゅんせつ)の効果もあってかCOD-Mn値が8ppmを下回るようになりワースト10位くらいに改善しました。プロジェクトでは、設立から継続して行政が実施しにくい地下水流動予測、物質収支推計、安定同位体分析の手法を用いた食物網解析や流域水文調査などを行い、住民、行政、大学が共同する形での啓発や学習の活動にも精力的に協力し続けてきました。
また、最近は毎年2~3月に関係者が集まって情報交換や議論を行う「佐鳴湖交流会」を開催しています。そのほか、かつて湖に生息していたヤマトシジミを復活させてさらに環境を改善しようという市民の取組みにも賛同して協力し、周辺の小中学生からの見学や環境学習の依頼、各種団体からの佐鳴湖についての講演要請などにも応えています。
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