2018年4月12日
関東地区
群馬大学 理工学部
環境創生理工学科・渡邉・窪田研究室では、電気産生微生物と呼ばれる電気エネルギーを作り出すことができる微生物を利用した微生物燃料電池技術を利用した新たな環境技術の開発を進められています。これまでの環境技術の多くは多大なエネルギー等を必要としてきましたが、微生物燃料電池は発電によるエネルギー回収が可能であるとともにこれまでにない特徴・利点を有します。今回、研究室で進められている微生物燃料電池技術の研究に関して、生活排水や産業排水を対象とした発電型排水処理技術と、湖沼や海などの底生環境の改善を可能とする発電型底質環境改善技術の2つの内容について紹介します。
電気産生微生物は、有機物分解などで生じた電子を直接自分の体外へと伝達可能です。この微生物を有機性排水処理に利用し、排水処理とともに発電によるエネルギー回収を可能としたのが微生物燃料電池です。これまでに実排水を用いた排水処理試験などを行い、微生物燃料電池では通常の排水処理に比べて酢酸や乳酸といった有機物の分解速度が促進されるといった知見が得られ、このほかにも実排水処理への適用に向けた試みを進めています。微生物燃料電池では、電気産生微生物より伝達された電子をエアカソード上で酸素還元反応により消費しますが、このときに使われなかった余剰の酸素の一部がアノードへと透過することで装置の発電効率が低下してしまうことが問題の一つとなっていました。これを解決するために、エアカソード近傍に硝化生物膜を形成させた装置を新たに開発し、硝化反応にこの余剰酸素を利用することで発電効率の低下抑制に加えて有機物・窒素同時処理型も可能としました。今後、エアカソードへの硝化生物膜形成の最適化などを進め、処理性能の向上ならびに安定化を図っていく予定です。
都市部に隣接する閉鎖性水域では、環境負荷が高く底質がヘドロ状となるなどの環境汚染が慢性的に発生しています。ヘドロ状となった底質は自然の力のみで浄化することが非常に難しく様々な取り組みが行われています。この汚染底質に対する新規の改善技術として、堆積物微生物燃料電池の研究を進めています。底質の中には電気産生微生物が存在していますので炭素電極を設置して回路を構築することで発電が生じ、底質改善が促進されます。電気産生微生物が存在しているだけではこの底質改善効果は発揮されず、微生物燃料電池技術を適用し電気が流れる環境を構築することが重要となります。これまでに(国研)国立環境研究所と協力して、実環境への本技術の適用試験を行い、発電とともに底質の嫌気的雰囲気の緩和や、毒性の高い硫化水素生成の抑制に加え、底質からの栄養塩の再溶出抑制などの種々の底生環境改善効果を得ました。現在は、この堆積物微生物燃料電池の実用化に向けて、底質改善能の向上や底質からの栄養塩再溶出機構の詳細の解明などを進めています。
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