2024年4月19日
関西地区
和歌山大学 システム工学部
システム工学部では、分野に縛られないテーマについて広く深く学び、研究することができるため、時には自由過ぎるんじゃないか? と言いたくなるような研究まであります。例えば、システム工学部の中には「妖怪」と環境をテーマに研究しているチームがあります。妖怪なんてふざけてる、自由過ぎると思う人もいるでしょう。しかし、大真面目な環境研究なんです。
システム工学部では、自然や環境、防災についても研究していますが、今の自然や環境の姿は、長い歴史の結果として存在しています。気候や気象、地質や地形だけで決まっていないのです。となると、今の自然や環境の姿を守り育てるためには、歴史を知らないと適切な技術は生まれません。しかし、歴史書には書かれていない過去もある。そういうときに、妖怪のような伝承の中に隠されている情報が使えるのです。とりわけ、過去に、どこで、どんな災害があったのか?という情報を知る上で、妖怪伝承は大いに参考になります。だから妖怪まで研究する、ということになるのです。この成果を応用すれば、新しい防災技術開発のヒントになるし、妖怪を題材にしたゲームソフトや学習ツールだって作れます。システム工学部は、幅広い分野を扱うから、こんな自由過ぎる研究も生まれるのです。
和歌山大学のある紀伊半島は自然が豊かで美しいところです。その「地の利」を活かせば、他の大学よりも有利に紀伊半島の様々なことを学び、研究することができます。だけれども、和歌山大学だから和歌山のことしか調べてはいけない、というようなことはなくて、世界を舞台に研究している学生はたくさんいます。
例えば、システム工学部の中には「砂漠のマングローブ保護」を研究しているチームがあります。マングローブというのは海岸にある森のことを示す言葉で、そこには様々な種類の木が生えています。マングローブという名前の木があるわけじゃありません。熱帯から亜熱帯に分布し、様々な動物の棲みかになり、土壌中に地球温暖化の原因物質のひとつ二酸化炭素を閉じ込めてくれます。しかし、マングローブが破壊されると、生き物は棲みにくくなるし、土壌中に閉じ込められていた二酸化炭素が大気中に放出され、地球温暖化(気候変動)の抑制力が低下する深刻な問題になります。だから、世界中でマングローブを大切にしようとする運動が始まっているのです。
そんなマングローブですが、アフリカの東海岸やアラビア半島のような砂漠地帯の海岸線にも細々としたマングローブがあります。雨が少ない場所ですから、塩分濃度の高い海水に浸かってもギリギリで生きられる樹種だけが生えています。ところが、最近、砂漠のマングローブがピンチになっています。その理由は、開発による海岸の埋め立てと、家畜、特にラクダによる食害です。地球上のラクダは全てが人が飼っている家畜か、人から逃げ出した野良ラクダです。砂漠ではみどりが乏しいため、マングローブはラクダの餌場としても重要な場所です。
海岸を埋め立てて砂漠のマングローブが減ると、残ったマングローブにラクダが集中し、いっぱい食べてしまい、残ったマングローブの木は弱ってしまい、枯れることもあります。このため、ラクダを飼うな、せめて減らせと、特に欧米の研究者が主張し、現地の皆さんは困っています。ラクダを飼えないと、そこに暮らす人々の収入がなくなる。じゃあ、都会に行って仕事を探せばよいか? 義務教育がないような途上国では、田舎の人は都会に行っても収入の非常に少ない仕事にしかなかなか就けない。何より、懐かしい故郷を捨てなければならない。そんな選択はしたくない。
この課題のひとつの解決策を見つけたのは、何を隠そうシステム工学部の学生でした。確かにラクダがマングローブを食べると、葉は減ってしまいます。ところが、食べる量が少しなら、むしろ「間引き効果(水と養分の分配が大きくなる現象)」によって残った枝や葉の成長が良くなり、結果的にみどりの総量が増えることを明らかにしたのです。つまり、マングローブを守るためには、適度な量の葉をラクダに食べさせる方が良かったのです。この結果をシステム工学部の学生が国際学会で発表したら、特に砂漠に国々の研究者から拍手喝采でした。システム工学部の学生の研究が、SDGsの視点から欧米の有名研究者の主張を上回ったのです
それを実現させたのは、海外で地道に研究した学生の勇気と忍耐でした。システム工学部の学生は、世界で活躍することもできるのです。知らない世界に踏み出す勇気と、失敗恐れないチャレンジ精神があれば、学生のような若者だって様々なチャンスを手に入れることができるのです。
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