皆さんは、工学部にどのようなイメージをお持ちでしょうか?英語では工学をエンジニアリング(engineering)と言いますが、辞書を引くと、基礎科学である数学・化学・物理学などを工業生産に応用する学問、と書かれています。確かにその通りですが、engineerには、元々、設計をする、策を練るといった意味が含まれており、工学は単に工業製品の生産だけが目的ではなく、基礎科学分野で明らかになった様々な原理を、どのように利用できるか、あるいは、何らかの課題解決に利用できないか、といった方策を考える(デザイン、設計する)ことが神髄だと私は思っています。特に、基礎科学分野で得られた知見を、社会に役立つ形で還元できる可能性を実感できる点が工学の最大の魅力だと思います。そのためには多くの技術的障壁を乗り越える必要があり、一つ一つ課題をクリアしていく、まさにエンジニアリングする根気強さが必要になってきますが、これが上手くいけば世の中の役に立てるという具体的な目標があればモチベーションが維持できると思います。
私はこれまで、近赤外光という目には見えない光を使って、物の断面を非破壊にイメージングする技術(OCT)の研究を行っています。OCTは、特に医療の世界で利用が進んでいますが、光を使って生体断層のイメージングを行えるため、被爆の心配がなく、装置が小型化しやすいといったメリットから非常に注目されている技術です。我々はOCTの性能を向上させるための新たな光源を、半導体ナノ材料を使って開発してきました。写真はその一例ですが、半導体ナノ材料である量子ドットを用いた光源開発に始まり、光源に最適なOCTシステムの開発、イメージング技術の習得など、色々な壁に当たりながらも、大学の研究室で若い学生さん達とアイデアを出しながらエンジニアリングしています。これからも試行錯誤の繰り返しになると思われますが、この研究の成果が医療の世界や工業生産の現場などで役立つことを想像すると、自然とやる気が湧いてきます。皆さんも、工学部でエンジニアリングしてみませんか?苦労も多いかもしれませんが、その結果が社会に還元される可能性を感じられる魅力的な世界だと思いますよ。
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