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生レポート!大学教授の声

鉄道車両に関する最近の研究テーマ

2024年7月16日
茨城大学
工学部機械システム工学科
道辻洋平
鉄道車両に関する最近の研究テーマ

 最近、とある大学の先生とお話をし「鉄道はすでに完成した技術であり、研究することは無いのではないですか?」と素朴な疑問を投げかけられました。皆さんは「鉄道車両の研究」と言われて、どのようなことが研究テーマになりえるかイメージできますか?

 この記事では、鉄道車両の研究としてどういったことが現在の課題となっているのか、一例をご紹介します。鉄車輪が鉄レールを転がるという鉄道の基本メカニズムには200年近い歴史があり、車両や台車の構造も近年でそれほど変わっていません。そういったところを見て「技術として完成している」印象があるのかもしれませんがもちろんそうではありません。今後の鉄道車両の研究課題はズバリ「メンテナンスの自動化・省力化」です。鉄道車両やレール、架線は頻繁にメンテナンスを行うことによりはじめて安定した輸送システムとなりえます。

 一方、日本に限らず先進諸国では労働人口の減少がすすんでいるため「人に頼らないメンテナンス」を確立する必要があります。そのようなことから、様々なセンサを車両に搭載し、車両が自分で健康状態を診断できるシステムの開発が進められています。どのようなときにどういった不具合が出るのかを検討するうえで、「車両運動シミュレーション」がたいへん役立ちます。車両運動シミュレーションは、力学に基づいて車両のリアルな動きをコンピュータ上で再現するというものです。

 上図に研究室でモデル化してきたさまざまな鉄道車両を示します。20年前は一つの曲線を走行させるだけで何時間もかかっていました。現代においては100か所のカーブからなる一つの路線を走行させるのに数分で計算できたりします。車両が実際に走るよりも早く計算できるようになりました。

 このようなシミュレーションを活用することで、さまざまな故障を模擬したり、故障を検知する方法を具体化できます。このような観点から言って、「鉄道車両の研究」は筆者自身の感覚からすると、今が一番ホットな状況にあると思っています。鉄道に興味のある方がいれば、ぜひこの世界に飛び込んで来てほしいと願っています。

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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