トップページ > 生レポート!大学教授の声 > 良いモノをつくるにはバランスが大切

生レポート!大学教授の声

良いモノをつくるにはバランスが大切

2020年1月24日
信州大学 繊維学部
上條 正義
上田蚕糸専門学校(1910年開校:信州大学繊維学部の前身)時代の製織実習風景上田蚕糸専門学校(1910年開校:信州大学繊維学部の前身)時代の製織実習風景

「良いタオルはどうやって作るのですか?」と以前、あるタオルメーカーの社長に聞いてみたことがある。タオルという繊維製品を作るための要素としては、糸つくりとタオル生地つくりに大別される。糸を作るには、綿の種類(綿と言っても原産地域によって特徴が異なる)、繊維長、糸の太さ、撚り係数、紡績方法などを設定する必要があり、これらの設定条件によって、様々な特性の糸(糸とは繊維を同じ方向に並べて束ねたものである)をつくることができる。さらに、タオル生地(経糸と緯糸とパイル糸を織った布である)をつくるには、パイルの長さ、経糸と緯糸の本数などを設定する必要があり、これらの設定条件によって、特性が異なるタオルが作れるのである。「バランスですね。」と社長が即答した。糸つくり、生地つくりの各種設定条件のバランスによって、風合いが良く、吸水性が良いタオルができるのだそうだ。ただ、どんな設定条件にすれば良いのかは、頭の中ではわかるが、それを人に伝えるように数量的に表現はできないと語っておられた。

 モノをつくる行程は、川の流れに例えて表現される。例えば、川上は、材料開発、川中は、加工、製造、川下は、評価・販売・流通、川全体は、企画・設計ということになる。タオル製造を考えると、どんな特徴のタオルを作るのかを企画し、糸つくりが川上、タオルを織る、染色するなどが川中、製造したタオルの特性評価、店舗での販売が川下になると思われる。これをさらに詳細にみると、糸つくりは、(1)混打綿、(2)梳棉、(3)練条、(4)粗紡、(5)精紡、(6)捲糸の各工程を経て糸が出来上がる。タオル生地つくりは、糸について(1)精錬・漂白・糊付け、(2)整経、(3)製織、(4)糊抜き・染色、(4)縫製、(5)検査・出荷などの工程によって、タオルが製造され、流通・販売されることになる。

 この中で、工学はどこに関わっているのだろうか?答えは、すべてに関わっているである。工学という言葉を辞書で調べてみると、「物理学・化学・数学などの基礎的科学を工業生産に応用するための学問」「基礎科学を工業生産に応用するための学問」などと書かれている。そして、種類を調べてみると、機械、金属、電気、制御、情報、化学、材料に工学が付く分野、医、デザイン、経営、感性などに工学が付く分野、自動車、建築、繊維、アパレルなどの製品に関する内容に工学が付いた分野など多種多様である。大学の進路を考える際には、単に工学と考えずに、どんな工学を自分はやりたいのかが絞れるのがより良い選択である。

 冒頭のとても使い心地が良いタオルを作れる社長はどんな工学を学んだのであろうか。製品を開発するためには、川上から川下についての技術に関する工学がすべて必要である。製品を開発するには、工学技術の融合することを含めてどんな工学技術をどのように使うかをバランスよく配置して、生産システムをデザインできるセンスを持つことが必要なのである。これからの世界には、様々な工学をバランス良く配置して製品を開発するためのシステムを構築できる人材が必要とされている。

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

関連記事

2010-02-08

なんでも探検隊

酒からダイヤが?~液中プラズマによるダイヤモンド形成~

愛媛大学工学部

2011-01-26

生レポート!現役学生の声

繊維と工学

信州大学繊維学部

2011-11-30

生レポート!卒業生の声

社会人の視点でのメッセージとアドバイスです

新潟大学工学部

2019-03-08

生レポート!大学教授の声

身近な元素から新しいモノを作ろう

岡山大学工学部

2018-09-21

生レポート!現役学生の声

興味の赴くままに

弘前大学理工学部

2020-04-17

環境への取り組み

材料・応用化学科における環境ISOへの取り組み

熊本大学工学部

信州大学
繊維学部

  • 先進繊維・感性工学科
  • 機械・ロボット学科
  • 化学・材料学科
  • 応用生物科学科

学校記事一覧

生レポート!大学教授の声
バックナンバー

このサイトは、国立大学56工学系学部長会議が運営しています。
(>>会員用ページ)
私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。
これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。