2021年11月19日
東北地区
山形大学 工学部
我々の身の回りには、多くのプラスチックやソフトマテリアルなどがあります。これら多くの材料は、生活用品をはじめ、自動車部品、最先端デバイスの基材などとして数多く利用されています。しかしながら、これら材料や素形材はマイクロプラスチック問題に代表されるように環境問題と直結してきました。また、持続可能な開発目標(SDGs)とともに、脱炭素問題としても取り上げられています。今後は、地球にやさしく、低炭素な社会を実現する材料技術や加工技術が必要不可欠になっています。山形大学では、2015年4月、工学部にグリーンマテリアル成形加工研究センター(GMAP)を設立しました。ここでは、低環境負荷、省エネルギー、低排出ガスを意識した材料の創製と、高付加価値「ものづくり」の研究を行っています。
本センターは、イノベーションと持続的発展を指向するグリーンマテリアルプロセッシング工学研究拠点として設立されました。プラスチックやソフトマテリアルの材料と成形加工に特化した日本で唯一の研究・教育施設です。
本センターでは、プラスチックやソフトマテリアルをはじめとする地球にやさしい新たな機能材料(グリーンケミストリー・グリーンマテリアル)の創製を目指しています。また、低環境負荷、少廃材を意識した最先端成形加工(グリーンプロセス)による素形材の研究・開発を行っており、地域にやさしい・地域に根差した新たな「ものづくり」研究拠点(グリーンマニファクチャリング)を形成することを目的としています(図1)。
図1 GMAPセンターのミッションと目標本センターの研究分野は広く、各教員が多くの成果を挙げています。
落合文吾教授は、高分子化学、有機化学を基盤とした研究者であり、環境に適合した新たな機能性材料を、豊富な資源を使う・長く使える・使った後に自然に帰るなどの観点から研究開発をしています。豊富な資源の活用においては、二酸化炭素を原料とした機能性材料、セルロース由来のプラスチックの高効率合成法、イオウを含む高屈折率材料や貴金属回収材料などを開発しています。長く使える材料としては、架橋構造の精密制御により、自立できる程度の硬さを持ちながら、折り曲げや圧縮に依る変形を繰り返しても破損しない材料を開発しています。形状記憶性を持つものもあり、折り鶴状に折り上げたあとに、お湯に入れるとフィルム状に戻り、さらに、また別の形態に折り上げることもできます。立体的に成形したものも同様の形状記憶特性があるため、重ねやすい形に変形させてから大量に輸送し、現場で形状を立体的に回復させることが可能になると期待されます。これが実現できれば、単に強靭さで材料を長持ちさせられるだけでなく、輸送のエネルギーコストを下げることができます。他にも希少な資源のリサイクルに向けた材料や新規生分解性材料の開発など、環境に優しい作り方で、環境に優しい材料の研究を進めています。
図2 落合研究室における環境材料研究伊藤浩志教授は、様々な生分解性樹脂やその複合材料の研究などを行っています。一例として、ポリ乳酸繊維に無機物・有機物を混合し構造を付与することにより、生体とのアンカー効果、細胞成長の促進など適合性の向上を達成しました。現在、非分解性樹脂による医療部材が使われていますが、より環境や廃棄問題を意識した高分子素形材の研究を行っています。医療分野で無痛針としての応用を意識した独立微細突起構造体などを生分解性複合材料にて作製し、実用化への足掛かりをつけました。さらに、プラスチックのアップサイクルのために、特殊な溶融混練技術によって新たなプラスチック(ポリマーブレンド)の研究を行っています。リサイクル材料に新たな機能性や物性の改善を行うことで、プラスチック循環への貢献を目指しています。
今後は、これらの研究をさらに発展させることを目標に、1)高分子材料研究・ものづくり技術を世界へ発信、2)地球にやさしいものづくり研究・技術の高度化・地域産業構造の改革、3)グリーンイノベーション&ライフイノベーションを支える様々な材料および技術の提案を行ってまいります。GMAPの今後の活動にご期待ください。
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